産後の育児の6つのスタイル〜里帰り出産はデフォルトじゃない!?〜

男性の育休体験記

産後直後の育児において最も気をつけるべきことの一つは「母体の回復を促すこと」です。

産後のママの体は、出産に伴う肉体的な負担によって大きなダメージを受けています。ママの母体へのダメージは自動車事故になった状態と同程度だとも言われています。

加えて、ママの体では産後に急激なホルモンバランスの変化が生じます。こうしたホルモンバランスの変化によって、産後のママの精神は不安定になり、10人に一人は産後うつを発症し、軽度なうつ症状を加えればその割合は3〜4人に1人とも言われています。産後うつが重篤化した場合には最悪のケースも想定され、実際に産後のママの死亡率の一位は自殺と言われています。

こうした精神的にも肉体的にも大きな負荷がかかっているママに、新生児の育児を一手に担わせるのは非常に危ないことです。ママの精神と肉体が壊れてしまします。

そのため、産後育児においては、周囲の家族が医療、行政等と連携しながら、「ママの母体の回復を促しながら、新生児の育児を担うこと」が非常に重要になってきます

そこで、本記事では、家族という育児の担い手に焦点を当てて、産後直後の6つの育児スタイルをご紹介します。ぜひ、これから育児に携わる方はご自身の状況も踏まえた育児スタイルを選択する際の参考にしてみてください。

加えて、伝統的なスタイルとして定着している「里帰り出産」について「パパの育児参加」との関連も踏まえながら再考していきたいと思います。

産後直後の6つの育児スタイル

産後育児において、家族が「ママの母体の回復を促しながら、新生児の育児を担うこと」は非常に重要なことです

こうした、産後育児を担う主体として「パパ」、「ママ」、「祖父母等(親戚を含む)」がまず考えれます。夫婦で子供産み育てるという決意をした「パパ」が育児の主体となることはもとより、「祖父母等」にも必要に応じてサポートをお願いするということが一般的に行われています。

「パパ」、「ママ」、「祖父母等」という主体がどのように産後育児に携わるかというスタイルを分類すると、6つに大別できます

このうち、日本において伝統的な育児のスタイルは「①里帰り出産(ママのみ)」になります。多くの家庭において「里帰り出産」を前提に産後育児のスタイルを検討されているのではないでしょうか。

「①里帰り出産」に似たスタイルとして「②祖父母等の通いサポート」と「③ペア里帰り出産」が考えられます。

「②祖父母等の通いサポート」については、高度経済成長期において都心部で働くスタイルが一般的になる中で、夫婦単位で居住する機会(嫁ぎ先で姑と暮らさない)が増えてきたため、居住先に祖父母等が通う形で産後の育児をするスタイルも増えてきました。

「③ペア里帰り出産」は、「①里帰り出産(ママのみ)」ではあくまでも産後のママのみが実家に帰るのですが、昨今では男性育休やテレワークの進展に伴い、ママに加えてパパまでも里帰りをするというスタイルがとられることがあります。「パパが里帰りしてどうするのか?家で夫婦で育てたらいいではないか?」という声もありますが、「里帰り出産」という伝統をベースに、パパが育児参加をすると、「③ペア里帰り出産」というスタイルが選択されることがあります。

日本では一般的に行われていますが、欧米では「里帰り出産」という文化はありません。あくまでも、夫婦で子供を産み・育て、必要に応じて周囲にサポートをお願いするという考えが浸透しています。

日本に駐在している英国の友人に「日本で産むのは言葉の壁もあるから里帰り出産しないの?」と聞いたら、「ママを産前産後のサポートをするのはパパの役目だろ!なんで祖父母に任せるんだ?」と不思議そうに言われたことがあります。

「④パパサポート(男性育休なし)」は現在40代前後の育休取得が一般的ではない環境においてワークライフバランス(WLB)の大切さを認識していたパパが選択した方法です。会社で働きながらも、定時退社を心がけ、飲み会に行かずに、家族のケアに最大限の時間を使うというスタイルです。昨今では、テレワークや働き方の柔軟化(フレックス、時短勤務等)も伴って、パパが働きながらより多くの時間を家族のために費やすことができるようになってきています。

「⑤パパママ二人三脚(男性育休)」はパパが育休を取得して家族のケアに100%コミットする育児スタイルです。夫婦で作り・育てるという選択をした責任をしっかりと果たすために、パパが仕事を一時的に離脱して、母体のケアと新生児の育児の主体となります。これから育児休業がより一般的になると、この「⑤パパママ二人三脚(男性育休)」の割合が飛躍的に多くなっていくことが想定されます。

「⑥ママのワンオペ」は本来育児を担うはずのパパの不在や祖父母等の協力を得られない場合に、やむおえず選択する産後の育児スタイルです。こうした育児スタイルは産後うつの発症リスクを高め、また、産後の母体の回復が遅れ、無理してしまえば後遺症が残ることもあります(例えば、第二子以降の出産で、上の子のケアをするために緩んだ骨盤で長時間抱っこをした場合等)。まして、多胎児育児においては命の危険さえある危険な育児となりかねません。

産後直後の6つの育児スタイルの選択

産後直後には6つの育児スタイルがあることを説明しましたが、こうした選択肢の中から、個別の事情に踏まえて夫婦にとってを最善のスタイルを選ぶことが大切です。

その選択において大切な検討項目の一つは育児の負担です。「ママの負担」、「パパの負担」、「祖父母等の負担」というそれぞれの主体のことを考えて選択肢を吟味することが大切です。

例えば、筆者の状況で育児の負担というものを考えた場合には、以下のようになります。

各家庭の「祖父母の健康度や関係性」、「パパの家事・育児スキル」、「ママの健康状態」、「ママが安心して子供を産める環境」、「兄弟姉妹の存在」などによって負担度は異なるかもしれませんが、我が家の場合は上記のような評価となり、育児負荷という点では「③ペア里帰り出産」と「⑤パパママ二人三脚(男性育休有)」が候補になりました。

加えて、筆者は「夫婦で育児をする意識の醸成」についても重視したかったため、上記に項目を追加して検討した結果以下のようになりました。

こうした検討をした上で、筆者は「⑤パパママ二人三脚(男性育休)」を選択しました。

検討項目としては、「負担」と「夫婦で育児する意識の醸成」を筆者は主として検討しましたが、それ以外にも「出費」や「兄弟への影響」、「特別事情(コロナ禍等)」等も重要だと思います。

皆さんも、ぜひ産後直後にどのように育児を担うかを検討してみてはどうでしょうか。ご参考まで、以下にブランクの表をつけておきますので、よかったら各夫婦の状況も踏まえて最善の育児スタイルを検討してみてください。

「パパの育児参加」から「里帰り出産」を見つめ直す

ここまでは産後直後の育児について様々なスタイルがあることや検討方法をお示ししました。こうしたスタイルのうち現在主流になっているのは「①里帰り出産」ではないでしょうか。

ママの妊娠が分かり実家に連絡をすると「わ〜おめでとう!いつ頃帰ってくるの?」と問いかけられる場合も多いのではないでしょうか。

「里帰り出産」は日本の伝統的な文化で非常に広く浸透しています。「里帰り出産」をすることで、実母を中心に産後のサポートをしてくれるため母体への負荷は大きく減ることになりますし、実家ということで精神的な安心感も得られるかもしれません。実際、里帰り出産により産後うつが抑えられているという意見もあります。

しかしながら、そのメリットだけではなく、デメリットも検討した上で「里帰り出産」という選択肢をフラットな目で検証することも大切です。

里帰り出産のメリットとデメリット(懸念)

例えば、「育児負担」ということを考えれば、祖父母が育児を担うことで負担は間違いなくかかります。特に、昨今では出産年齢の高齢化(りすパパさんの育休体験記)に伴い、祖父母の年齢も高齢化しており、里帰り出産の負担は増しています。加えて、夫婦共働きが一般化する中で、働きながら里帰りした実娘のケアをするとなればその負担は相当なものになります。一歩間違えれば、祖父母が体を壊してしまうことになりかねません。

もちろん、パパが仕事が忙しくてどうしてもママのケアをすることができないということであれば、ワンオペ育児を回避する手段として「里帰り出産」が有効であることは間違いありませんが、パパが育児に携われるのであれば必ずしも「里帰り出産」を選択する必要性はないかもしれません。

高度経済成長期はパパのWLBが完全にワーク(W)に傾いてしまっていて、育児負担を祖父母等が担う「里帰り出産」が社会的に是とされていましたが、昨今のパパの育児参加が声高に叫ばれる状況では、「子供を作り育てるという選択をしたパパ(とママ)が責任を持って主体的に育児に参加する(必要に応じて周囲のサポートをお願いする)」というスタイルへの転換が必要かもしれません。

里帰り出産には他にも「祖父母の育児ノウハウを聞くことができる」、「祖父母があかちゃんに触れ合うことができる」、「地元なので精神的な安らぎを感じられる」といったメリットもあるかもしれませんが、同時に懸念点(デメリット)もあります。

特に、育児をする上で最も大変な時期と言われる新生児の育児をパパとママが二人三脚で行うことで育児に対する連帯感が生まれ、また、ノウハウもお互いにコミュニケーションを図りながら共有することができます。つまり、新生児の育児を通じて、その後の育児を夫婦で行う礎が形成されます。こうした礎が「里帰り出産」によって築かれずらくなってしまうことが懸念されます。

新生児の育児を通じてパパの育児スイッチをON!

育児・育休に関する世代ごとの男性の認識

育児に対する意識は世代によって大きく異なります。

大まかな世代ごとの育児・育休に関する意識の差は上図の通りです。

60代以上は「男は仕事世代」であり、高度経済成長における「男は仕事、女は家庭」という完全分業制が根付いてしまっています。高度経済成長期における欧米列強に追いつくための仕組みとして、パパを家庭から剥がし会社に専念させ猛烈に働かせ、ママは家事や育児を通じて国の次世代の担い手を育てるということも効果的だったのかもしれません。しかし、成熟期を迎えた日本経済においてこうした「男は仕事、女は家庭」という考え方は合わなくなっています。男女の分け隔てなく多様な視点での創造的発想がより必要になってきているのではないでしょうか。

40〜50代は「ワークライフバランス世代」です。平日は仕事に専念するも休日は家族サービスを心がける傾向にあります。共働き世帯も多く、パパが育児をすることに対して一定の理解があります。ただ、育児や育休に対する感覚にはばらつきが多く、上司が育児や育休に対して厳しい意見を持っている場合には部下として仕えるパパは苦労することになります(つーちゃんねるさんの育休体験記)。

30代は「育休取ってもいいですか世代」です。パパの育休が社会的に認められるようになった第一世代です。周囲に育休取得者がわずかな中で育休は取得したいが、職場の取得しづらい雰囲気に葛藤する傾向にあります。

20代は「育休デフォルト世代」です。この世代では育休を取得することが当然と考え、就職先の選択においても育休取得ができることを当然に求めます。育休取得しづらい職場であれば、もしかすると転職してしまうかもしれません。また、こうした世代は、夫婦共働きが多く、家事や育児を担うことを自然に身につけている傾向にあります。

世代ごとの育児スイッチへの感応性

こうした世代ごとの特性によって育児スイッチの感応性が大きく変わってきます。

上図は世代ごとの育児スイッチの感応性を表したものですが、大きく3つのグループに分けることができます。

一つは「子供の出生に伴い、自然と育児に対して当事者意識を持ち、育児に積極的に励む層」です。こうした層は、親や周囲が育児に積極的に携わっていた影響を受けている場合が多く、子供が産まれると育児を当事者として積極的に担うようになります。

2つ目は「子供の出生に伴い、きっかけがあれば、育児に対して当事者意識を持ち、育児に積極的に励む層」です。こうした層は、何かきっかけがあれば「育児スイッチON」に切り替わります。20代〜30代において大きな割合を占めており、こうした層に対してどのように育児スイッチをONにするきっかけを提供するかが重要になります。

その一手段として有効なのが「産後直後の育児」にどっぷり浸かることです。特に育休を取得することは有効です。育休を取得して1ヶ月間育児にどっぷりと浸かれば「育児スイッチON」になり、育児を当事者意識を持って担ってくれるようになるでしょう。

本当は「パパなんだから当然育児してよ!」と思う気持ちもあるけど、そこをぐっと堪えて「パパ育休取ってくれない」とお願いしてみることも大事かも!

その一言をきっかけに、パパが育休を取得して育児スイッチをONにすることができるなら、一言の効果はとっても大きいわね!

しかしながら、そうした時期に「パパには会社で働いて欲しいから」という思いやりから、里帰り出産を選択した場合には、もしかするとパパは「子供が生まれたから今まで以上に仕事を頑張ろう!」と思ってしまうかもしれません(筆者も第一子出生児はこのパターンでした)。

パパ育コミュにおいても、産後に育児にコミットしたパパは、育児に対して当事者意識を持って積極的に育児に携わる傾向にあります。

ぜひ、パパとママが夫婦で育児をする礎を形成するために、「里帰り出産」を敢えて選択せずに、パパに育休を取得してもらうという選択肢も考えてみてはどうでしょうか。

おすぎパパさんは「ママの里帰りしない宣言」を受けて、育児の当事者意識を持ち育休取得を決意しました。本来は、パパが自然と育児の当事者意識を持ち、里帰りに関係なく育児に積極的に携わってくれるといいのですが、なかなかパパの育児スイッチはONになりにくいのも現状です。
ママさんからパパの育児スイッチをONにするために働きかけることも時には有効かもしれません。その一つの選択肢が「里帰りしない宣言」かもしれません。

パパは本当に育児をするのか!?

パパが育児を当事者意識を持って担うように、里帰りをせずに育休を取って二人三脚で育児をしようと決断したママさんはもしかしたら漠然とした不安に駆られるかもしれません。

パパが育休は取ったけど、育児しなかったらどうしよう。いつも休日はゴロゴロ家で寝転んでばかりいるから不安。

そんな時でも、パパを信じてあげてください。これまでも育休を取得したパパが、育休をきっかけにバリバリと家事や育児をした事例はあります。

パパが万一育児をしなかった場合に備えて

可能性としてパパが育児をしないということもあります。先の図表で言えば、「グループ③育児スイッチOFF」であり、こうした層に対してはいくらきっかけがあっても育児をすることは期待できないかもしれません(育休を取得してもらっても、取るだけ育休に終わりママのストレスとお昼ご飯を作る負荷が増えるという危険性も。そんな夫婦には産後クライシスが訪れるかもしれません)。

そうした時に育児の負荷を軽減するために、欧米の育児サポート制度が参考になることも 。というのも、欧米では「里帰り出産」という習慣はなく子供を産み育てるという選択をした夫婦が責任を持って育児の主体となることが前提としてあり、それをサポートする行政サービスが充実しているのです。

一例としてネウボラというフィンランド育児支援制度があります。

ネウボラは出産・育児に関するワンストップの支援を提供するサービスで、産前・産後・子育てまでを切れ目なくワンストップで支援してくれる制度です。保健師さんが各家庭と信頼関係を築きながらサポートしてくれるので、困った時はなんでも相談できます。

しかも、出産にあたり素敵なギフトボックスをプレゼントしてくれるので、ネウボラの利用率は非常に高いそうです。

日本でもこうした取り組みをしている自治体(渋谷区)や民間団体がありますので、ぜひご参考にしてみてください。

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