【データで見る男性育休】育休を取得しづらい職場の雰囲気を生む“3つの要因”と「周囲の育休取得者」の存在

データで見る男性育休

男性の育休取得率が上がらない理由の一つとして「育休を取得しづらい職場の雰囲気」があります。

この目に見えない職場に漂う空気が男性の育休取得を阻害する最大の理由です。

雰囲気という掴み所のない実態を解明するのは難しいのですが、育休を取得した実体験や周囲の育休取得者へのヒアリング、またアンケート調査の結果を踏まえて以下の3つの要因を分析してみようと思います。

  • 要因①職場に迷惑をかけることへの罪の意識
  • 要因②育児は女性の仕事という前近代的な固定観念
  • 要因③職場で特別な存在になることへの懸念

要因①職場に迷惑をかけることへの罪の意識

男性育休アンケートにおいて、育休を希望したものの取得できなかった男性に対して「育休取得を断念した理由」を質問した結果が上図です。

「職場の人員が不足していた」が最も多く45.9%、また、「自分にしかできない業務があった」が29.7%となっています。この結果から、育休を取得する上での大きな懸念事項として自分がいなくなることで職場に迷惑をかけるという意識が強く働いていることがわかります。

もちろん、職場に迷惑をかけないために育休を取得しないという選択肢もありますが、その結果として家庭をサポートする時間が十分に取れず、家族を犠牲にしているのではないでしょうか。

このように、職場に迷惑をかけるという罪悪感が育休を取得しづらい職場の雰囲気の原因の一つです。

【コラム】「半育休」という新しい育休のスタイル!?
実は、育児休業中に職場の業務を担うことができます。育休前に担当していた業務の急なトラブルや繁忙期などに必要に応じて短時間働くことができるため職場の負担も低減されますし、また会社業務に継続的に触れることができるため復職もスムーズになります。時間や勤務日数は制限されているのですが、月に10日間(10日間を超える場合は80時間以内)までであれば働くことができ、労働時間に対する一定の賃金を受領することができます。
昨今ではコロナ禍の影響もありテレワークが普及してきているため、在宅勤務による「半育休」というスタイルは、今後新しい育休の在り方となっていくかもしれません。
職場から「育休中でも在宅で働ける」と頼りにされて、家庭のサポートが疎かになっては本末転倒ですが、家庭と職場の優先順位を明確にしながら、必要に応じて半育休を選択することも検討してみてはどうでしょうか。
【男性育休アンケートにおける「みんなの声」】
育休取得者①「育休中に週一回だけ出勤する方式で育休を取得しました。なので、半年の長期育休でも会社の動きを把握できていたので、復帰もスムーズにできました。 「半育休」についても社会の認知度が上がると良いと思います。」
ママ①「育休の取得について、個人的には産まれて1年2年と続けて取ることよりも、例えば、いつもより出社を1時間遅く出社し、1時間早く帰宅できる環境であったり、育休期間のみ週3〜4日勤務にしてもらえたりする働き方を見直してもらえた方が助かります。正直、母親は一日中家におり気が滅入る瞬間もあります。加えて育休を取得した夫が同じように1年2年と家にい続けるよりは、定期的に休みを取ってもらえた方が助かるなと感じます。」ママ②「すべての人が休みやすい職場環境が必要だと思います。」

要因②育児は女性の仕事という前近代的な固定観念

日本には「男の本分は外で働いて家族を食わせること」、「女の本分は家庭を守ること」といった性別による役割分担が、見直されてはきているもののまだ根強く残っています。

例えば、女性配偶者のことを「家内」と呼称することがありますが、これは家の中に所在している様を表しており、結婚後も社会で活躍する女性が多い昨今の女性配偶者を形容する言葉としては違和感を感じる人もいるのではないでしょうか。

こうした傾向は国際的な男女の役割の違いに関するアンケート調査でも明確になっています。

内閣府が平成27年度に実施した「少子化社会に関する国際意識調査報告書」によれば、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えに対して、日本は欧米諸国に比べて賛成する割合が多くなっています。

上記の結果を反映するように、日本では夫の育児参加が国際的に低い傾向にあります。

内閣府の平成30年版「男女共同参画白書」における「6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児関連時間(1日あたり,国際比較)」によれば日本の夫の育児関連時間が欧米諸国に比べて低いことが明らかにされています。

このように、日本では育児に関する男性と女性の性別的役割の違い、つまり、「育児は女性の仕事という前近代的な固定観念」が根強く残っており、育休を取得しづらい雰囲気の一因になっています。

【男性育休アンケートにおける「みんなの声」】育休取得者①「会社も理解があり、育休取得に表立った反対などはなかったが、自身の親にはとても理解を得られないと考え、育休を取ったことは話していない。仕事に全てを捧げることが是という価値観の親世代にはなかなか理解を得ることが難しいと感じる。(人によるとは思うが)」
育休取得者②「まわりの環境よりも自分自身が家事、子育てをやろうと思っているかがとても大事ではないかと思う。あれこれ理由つけて取得しない人は家事育児したくないという本質を理解されないよう逃げているだけではないかと思う。妻に自分の母のように甘え、父親は子供が生まれたら一層仕事を頑張るべきと思いこんでいるのではないかと思う。」
ママ①「毎日ずっと一緒にいる経験がなかった為、育休を取ると夫に言われた際はケンカが増えるのではと不安でしたが心配したケンカは増えず充実した日々を過ごせました。また夫は家事能力が高い為、育休を取ってくれた事で大変助かりました。家事ができない男性が育休を取っても奥さんはイライラが募るかもしれません。家事育児は男女共にするのが当たり前という考え方の社会になれば取得率は上がるのではないかと思います。」
ママ②「男性が稼ぎ頭の時代も変わったので、女性が働くために男性が家庭に入るのも普通になってほしい。男女の差はない。」
ママ③「男性が1~2年育休、その後5年くらい週2~3日、時短勤務、というように、完全に夫婦で半々になれば、就職時の男女差別がなくなると思う。」
ママ④「とにかく社会全体として、子供は産んだ女性だけではなく男性も育てる責任がある事、男性にとっての育児家事は手伝うではなく主体的に行う事が当たり前になることを望みます。」
ママ⑤「元パートナーは色々やってくれましたが、常に「手伝ってやってる」、「お前は1人では子育て出来ない」など、上から目線のコメント多くきつかったです。育休も1週間取得してくれましたが別室で仕事していて、何かあったら呼んで、と。当時は、同じ家に大人がいるだけでましだ、と言い聞かせていました。 育休が、男性にとって「主体的に」家事育児に関わるきっかけとなってくれたらいいなと思います。」

要因③職場で特別な存在になることへの懸念

日本人は周囲の空気を読む能力が高い傾向にあります。逆に言えば、自分が特別な存在になることに対して臆病になる性分です。行動をしない理由として「周囲の人がやっていないのであれば、やらない」ということがよくあります。

男性の育休が普及しない理由としても、周囲に男性の育休取得者が不在である中で、自分だけが育休を取得することで特別な存在になることへの懸念があるのではないでしょうか。

自分が職場で育休を取得すると宣言した場合、周囲から奇異の目にさらされるかもしれませんし、中には、周囲の迷惑を顧みずに自分だけ育休を取得した者としてハラスメントを受ける可能性もあります。

こうした、男性の育児参加に伴うハラスメントは父性(パタニティ)と嫌がらせ(ハラスメント)を組み合わせてパタニティ・ハラスメント(以下、パタハラ)と呼称されています。

例えば、以下のような場合がパタハラに該当します。

  • 男性育休を取得しようと上司や人事部門に相談したが不当に取得を拒絶、もしくは取得期間を短縮された。
  • 男性育休を取得申請をした結果、職場の同僚から嫌がらせを受けた。
  • 男性育休から復帰後に、不当な職場の配置換えや減給、降格処分、昇進の遅延等の不利益を受けた。

こうした育休に伴うハラスメントは法律によって明確に禁止されています。

具体的には、育児・介護休業法10条において、労働者が育児休業の申出をし、または育児休業をしたことを理由として当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁じています。

しかし、パタハラは実際問題として起きています。

目に見えるパタハラ〜東証1部上場企業で起きた事例〜

2019年に東証1部上場企業で子育てサポート企業として厚生労働省に認定された企業においてパタハラが生じました。同社に勤務する男性社員が育児休業明けに不当な転勤を命じられてやむなく退職するという出来事がありました。

男性社員の妻がSNSにおいて男性の不当な処遇について投稿したことで明らかになりました。

SNSの投稿は以下のとおりです。

「信じられない。夫、育休明け2日目で上司に呼ばれ、来月付で関西転勤と。先週社宅から建てたばかりの新居に引越したばかり、上の息子はやっと入った保育園の慣らし保育2週目で、下の子は来月入園決まっていて、同時に私は都内の正社員の仕事に復帰予定。」

社内的にどのような判断があったのかは分かりませんが、育休明け2日目に転勤が命じられたというのは不当な処遇が疑われる出来事です。

加えて、問題を大きくしているのは、同社が厚生労働省により「子育てサポート企業」として認定され、「くるみんマーク」を取得していたことです。

子育てサポート企業と認定された東証1部上場企業ですらパタハラが起こってしまったことは社会に衝撃を与えました。

目に見えにくいパタハラ〜サラリーマンのハンディキャップ〜

こうした目に見える形のパタハラもありますが、一方でグレーゾーンともいえるパタハラもあります。

例えば、育休を取得したことで育休を取得しなかった社員と比較して「ボーナスの評価が相対的に低くなる」、「相対的に出世が遅れる」といったことは起こり得ます。

もちろん、先述のとおりパタハラは明確に法律違反ですが、人事評価や出世は相対的なものですので、こうしたグレーゾーンに位置する事象を取り締まることは難しいのが現状です。

育休を取得したことで、「仕事よりも家庭を優先した」というレッテルを貼られて出世競争から脱落するという機会損失のリスクは、サラリーマンとしてその後数十年にわたって働き続ける者にとってはあまりに大きなデメリットです。

上表は、育休希望者が「育休取得を断念した理由」ですが、「昇進や昇級が遅れるため」が12.2%、「育休復帰後の待遇が心配だったため」が9.5%となっており、回答割合こそ高くありませんが、育休取得を検討する段階から育休復帰後のパタハラを懸念する声が間違いなく存在することが分かります。

このように、目に見える形(パタハラ)やグレーゾーン(出世で不利益を受ける)として存在する様々なリスクを孕んだ「特別な存在になることへの懸念」というのが育休を取得しづらい職場の雰囲気を醸成する一因ではないでしょうか。

【男性育休アンケートにおける「みんなの声」】ママ①「夫には育休は無理でも、定時後の18時から21時までは子育てに充ててほしいと要望していました。が、実際には、周囲の理解もなく、プロジェクトから外すなどをちらつかされ、今までと変わらない働き方のままです。男性の家事育児参加が促進されるためには、家族が居ようといまいと、定時で仕事が終わることが当たり前だという風潮、企業の変化が求められると考えています。育児中の人だけを特別扱いしているのでは、時短の女性社員か肩身の狭さを感じることと変わらない環境を生み出し、結果広くは普及しないと思うので。」

周囲の育休取得者の存在が育休取得を後押しする!?

将来的に男性の育休が普及し、職場に男性の育休取得経験者が増えた場合には自分は特別な存在にならなくなります。その場合は、育休取得率は増加するのでしょうか。

その質問に対する一つの示唆が今回の男性育休アンケートから得られました。

グラフ

上表は、男性育休アンケートにおいて周囲の育休取得者の人数について調査した結果です。パパ(育休取得)とパパ(育休未経験)では、前者において周囲の育休取得者が多い傾向にあります。

加えて、ママも周囲の男性の育休取得者から影響を受けています。

上表は「周囲の育休取得者の存在」と「ママのパパへの育休取得の要望」の関係を示したものです。

周囲の育休取得者の数が増えるにつれてパパへの育休取得の要望が強くなっており、周囲の男性育休取得者が2人以上では「是非取得して欲しい」が87.9%、「取得して欲しい」が6.1%、合計94.0%が育休取得を要望していることが分かります。

ママはパパに産後のサポートをしてほしいと内心では思っていても、男性育休という選択肢があることを知らない、もしくは、選択肢があってもパパの仕事への影響を懸念して取得を要望して良いか分からない状況にいる人が多くいることが推察されます。こうしたママの潜在的なニーズが、周囲の男性育休取得者の存在に触発されて「うちのパパにも育休をとってもらおう」と具体的な要望に変わるのかもしれません。

このように、直近の男性の育休取得率は低水準に留まっていますが、今後少しづつ周囲の育休取得者が増えるにつれて「育休を取得しても特別な存在にはならず」、その結果として育休が取得しづらい雰囲気が解消されていくのではないでしょうか。

【男性育休アンケートにおける「みんなの声」】育休取得者①「育休取得者の積極的な経験談の発信は、職場での雰囲気の醸成に有用だと思います。」育休取得経験のないパパ「同じ職場の人が育休を取ると、「いいなー!取ればよかったなぁ」と思う人も増えると思います(私です。育休を取るという発想もなかったので…)」。そして、私の知っている「育休を取った父親」は、ほぼ間違いなく「取ってよかった!」と言っているので、育休を取ったことのある人の体験談がもっと広まると、父親の育休も増えるかな~と思います。」ママ①「男性育休について、女性はともすれば自分の配偶者の話ばかりになりがちですが、実は先輩同僚後輩に育休取得の人が増える事にとても意義があると感じています。仕事は仕事、しかし職場の同僚と家事や育児についての情報交換をする事が非常に意義深いと感じています。」ママ②「夫の育休の可能性について今まであまり考えたことがありませんでしたが、(男性育休アンケートへの回答を通じて)3人目がもし生まれるようなことがあれば、ぜひ検討してもらいたいなと思いました。」ママ③「夫の会社は育休を取得した男性はいまだゼロで、当然の流れで夫も全く取得できませんでした。赤ちゃんのお世話をひとりでしながら、夜に夫が帰ってくるのが本当に待ち遠しかったです。男性が当たり前に育休を取れる社会になっていってほしいと思います。」

育休を取得しづらい雰囲気〜ファーストペンギンに続け!〜

男性の育休取得が低迷する理由の一つである「育休を取得しづらい雰囲気」の要因として以下の3つが深く関わっていることを説明しました。

  • 要因①職場に迷惑をかけることへの罪の意識
  • 要因②育児は女性の仕事という前近代的な固定観念
  • 要因③職場で特別な存在になることへの懸念

こうした要因によって醸し出されている「育休を取得しづらい雰囲気」ですが、今後育休を取得する男性が増えていくにつれて、雰囲気が改善されていく可能性についてもアンケート結果から示唆されました。

今はまだ男性の育休取得者、特に、長期の育休取得者はマイノリティです。そのため、雰囲気を乗り越えて勇気ある一歩を踏み出す必要があるかもしれません。

ですが、そうし「ファーストペンギン」が育休という海に飛び込むことで、同じ会社や職場において後に続く者も育休を取得しやすくなるのでしょう。

実際に男性育休アンケートにおいて、育休取得者のうち周囲に育休取得者がいない場合は、実に61.9%が「周囲に育休取得者がいないため自分が前例になるため」と回答しており、先駆者精神をもって育休を取得したと回答しています。

この結果は男性育休、特に、長期の育休取得者がまれな現在の状況で育休を取得する人が強い意志をもって育休取得をしていることが示唆されます。

政府の強力な旗振りのもとで男性の育休取得率の引き上げに向けて社会が継続的に努力することで、男性の育休の必要性が国民一人一人に浸透すると共に、周囲の男性の育休取得者が徐々に増え、育休を取得しづらい雰囲気が改善してくでしょう。そうすれば、先駆者精神という強い意志がなくとも、育休を取得したい人が当たり前に育休を取得できるようになる日が来るのではないでしょうか。

【男性育休アンケートにおける「みんなの声」】育休取得者①「育休義務化が議論に上がっていますが、育児は両親でするのが当然だと思っています。(共働きなら尚更) 少しでも、一石を投じられたらという気持ちが最初はありましたが、今は子供の成長を間近に見える育児をしていて楽しいです。もし、育休を取らなかったらこんな貴重な経験を味わえないのが残念に感じていたと思います。 ぜひ、多くの人が2週間や1ヶ月などの短期間でなく半年以上の長期間の育休を取れるような社会になってほしいものです。」

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