育児うつというと、ママの産後うつに焦点があてられることが多いのですが、実はパパも育児うつを経験することがあります。
加えて、その割合は思ったよりも多く、実に5割にのぼったりします。
今回はパパ育コミュが実施したパパママ260名の声を収集したアンケート結果やインタビューから、パパの育児うつについて迫ります。
実にパパの5割が経験する育児うつ
上図はパパママさんに育児うつの経験について聞いた結果です。
ママに比べると経験割合は若干少なくなるものの、男性も「とても当てはまる」が21.6%、「当てはまる」が25.5%と合わせて47.1%のパパが育児うつを経験していることが分かります。
パパのデータを育休経験の有無で分けて分析したデータが上図です。
育休取得者(右)の方では「とても当てはまる(19.3%)」、「当てはまる(31.3%)」を合わせると過半数の方が育児うつを経験していることが分かります。
以前に、育休パパにヒアリングをさせて頂いた際にも半数の方が育児うつを経験されていたので、体感とあった結果となりました。
インタビューに協力くださった方
今回の記事作成においては、UDさんとゆういちさんのお二方にもご協力頂きました。
UDさんは第一子出生時に育休を取得したのですがワンオペであかちゃんと向き合う日々を過ごす中で、想うようにいかない育児に心労がたまり、心身ともに疲弊していき体調が悪化し、病院を受診されました(現在は第二子出生に伴い育休中とのことです)。
ゆういちさんは双子のパパです。育休を取得され夫婦二人三脚で育児にあたっていたのですが、奥様が一足先に復職されたタイミングでワンオペとなり、過度な育児負担で1カ月もたたないうちにみるみるうちにストレスが溜まっていき心身が疲弊して心療内科を受診されたそうです。
実際に育児うつを経験された方が貴重な中で、お二方にインタビューをさせて頂きました。
育児うつを経験した時期と理由
上図は育児うつを経験した時期についてですが、「出産後1週間以降1か月以内」や「出生後1カ月以降3ケ月以内」がパパママともにボリュームゾーンとなっていますが、広くばらつきがみられます。
ただ、ママの場合はホルモンバランスの関係もあるためか出生後すぐに発症される方の割合が多い傾向にあり、パパはむしろ出生後半年以降の割合が多くなっており里帰り出産などだとそもそも育児のスタートが遅れるなどの要因もあるのかな~と感じました。
上図は育児うつを経験した理由に関する結果です。
パパは「家事や育児に伴う肉体的な負担(仕事との両立を含む)」が50.8%と最も多く、「夜泣き等に伴う睡眠不足」が49.2%、「家事や育児や思うようにできないことに対する苛立ちや無力感」が39.3%となっています。
一方で、ママは「夜泣き等に伴う睡眠不足」が75.4%、「家事や育児や思うようにできないことに対する苛立ちや無力感」が65.6%と異なる傾向が見て取れます。現在も多くの産院では母乳育児が推奨されるため新生児の育児におけるママの授乳負担が重かったり、育児マニュアルが普及する中でマニュアル通りにできないことへの不安等もこうした選択肢の背景にあるのではないかという意見がありました(我が家も思い当たる節がかなりあります💦)。
また、ママでは「漠然とした産後のイライラ(女性特有のホルモンバランスの変化)」が55.7%と高い割合となっています。ママの育児うつは新生児の育児という物理的なものだけではなく、生理的な現象という側面もあるのですね(我が家のパートナーは授乳期間が終わったら「パッと空が晴れたような気分になって、育児うつから解放された」と言っていたことがあります)。
UDさんは、育児うつを経験されたのは子供が生まれて10カ月後頃だそうです。子供の出生後7カ月目から奥様の復職のタイミングで育休を取得されて、ワンオペで赤ちゃんと向き合う日々がスタートしたそうです。そこから3ケ月くらいで心身に不調をきたし始めたそうです。要因としては、慣れない育児をワンオペでこなすことで思い通りにいかずにストレスが蓄積されていったそうです。特に、離乳食を作って与えても食べてくれなかったり、離乳食を放り投げて衣服や部屋が汚れてしまったりとすることはとてもつらかったそうです。加えて、仕事から離れて家に籠って赤ちゃんと向き合う日々を過ごしていたことでストレスのはけ口が無くなってしまったそうです。
ゆういちさんは、育児うつを経験されたのは子供が生まれて11カ月頃だそうです。子供が生まれたから1年近くは育休を取得して夫婦二人三脚で育児にあたっていたそうです。この間は育児はとっても楽しかったそうです。しかし、奥様が一足先に復職されたタイミングで一か月のワンオペ期間があったそうです。この間の一か月間で一気に心身ともに疲弊してしまったそうです。双子育児の壮絶さは想像を絶するのですね💦加えて、ゆういちさん自身も復職を控えるタイミングだったので、どのように復職したらいいのか不安があったことも大きなストレスとなっていたそうです。
育児うつの症状
上図は育児うつの症状をパパママで比較したものです。
パパママ共に「日々の育児に追われる中で、精神的にも肉体的にもつかれた」が最も高い割合となっています。
その他の選択肢について、パパは「育児等を上手にできない自分を不必要に責めた」が32.3%、「日常生活の中で、いつも通りに楽しいことを楽しいと感じられなくなってきた」が29.0%となっています。
一方で、ママは「育児等を上手にできているか、漠然と不安になってきた」が59.0%、「日々の育児等に追われる中で、辛くて涙が出てきた」が59.0%となっています。また、「寝つきが悪くなったり、不眠症になった」が42.6%(パパは11.3%)、「自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた」が23.0%(パパは1.6%)とママの症状はパパに比べてかなり重いことが示唆されています。
育児うつの要因で見てきたように、ママは、ホルモンバランスの変化という生理的な要因、新生児の夜間授乳、育児マニュアル通りにできない自分を責める気持ち等などが影響して、内的・外的な様々なストレスが産後のぼろぼろのママに蓄積してしまっているのではないでしょうか。昨今でこそ育休取得が少しずつ浸透してきてはいますが、それでも現在のママを取り巻く育児環境はまだまだ過酷なものなのかもしれません。
もっとパパが育児に当たり前に携われるようになり、産後のママの育児環境が健やかなものになることを切に祈っております。
育児うつの症状を受けて病院を受診した割合を示したのが上図です。
男性は5.2%、女性は18.0%と大きく差があることが分かります。
男性の方が症状が軽いことや、そもそも男性が育児うつで病院を受診するということが一般的ではないため「病院に行く」という選択を取るパパが少ないことも一因かもしれません。
病院を受診した経験がある方に実際に「産後うつ(パパの場合は育児うつ)」を診断されたかについての結果が上図です。
診断された割合は、パパは0%、ママは46.7%となっています。
上述した通りですが、パパの育児うつはまだまだ医療現場でも一般的に認識されていなかったりします。実際に、コミュニティでもお世話になっている産婦人科医の先生とパパの育児うつをテーマに意見交換させて頂いた際にも、「医療現場においてパパが育児うつと診断されることはほとんどなく、一般的なストレスに起因する心身の不調に対する心療内科や内科的な治療が行われている。」とのことでした。
UDさんは内科を受診されたそうでうし、ゆういちさんも心療内科を受診され、治療を受けられたそうです。育児に起因するストレスが一因ということはお医者さんも理解されていたとのことですが、育児うつという診断はなされなかったとのことです。
パパの「育児うつ」という病名はまだまだ医療現場でも認識されていないというのが実態なのかもしれませんね。
パパの育児うつを解消した時期や工夫
上図は育児うつを解消した時期を示したものです。
パパとママで顕著な違いがみられ、パパは解消にかかる時間にばらつきがある一方で、ママは「一年超」が37.9%で「半年超1年未満」が19.0%と続いており、解消に多くの時間がかかる傾向があることが分かります。
上図は育児うつの解消に向けて行った対策を示したものです。
パパは「気分転換をする時間の確保」や「パートナーとの育児等についての話し合い(負担割合の変更等)」、「十分な睡眠時間の確保」といった対策を主体的に講じることで解消している傾向にあります。
一方でママは「時間が解決した(子供の成長、環境の変化等)」が67.2%で突出しています。これは、ママの育児うつの解消に一年超かかる方が多かった前問とも整合して、ママの育児うつは短期的に解消することは難しく時間をかけてゆっくりと解消していくものであることが示唆されます(我が家の妻も授乳期間が終わったら解消したといっていたので授乳関連のホルモンとも関係しているのかもしれません)。
UDさんは、外でコミュニケーションをとる機会を増やすようにすることで解消したそうです。具体的には、ベビースイミングに参加することでママ友さんとおしゃべりすることで気分転換ができたそうです。加えて、当時困っていた離乳食等の育児の悩みを相談することで育児のヒントをもらえたことも大きかったそうです。
ゆういちさんは、1カ月のワンオペ期間を経て子供を保育園に預け始めたら症状が改善されたそうです。加えて、復職に関する不安についても、新しいクライアントさんが見つかったりと復職のめどがたってきたことで解消したことも大きかったそうです。
お二方とも、ご自身の育児うつの原因が解消されると症状もス~となくなっていったそうです。
アンケート結果にもあった、男性の育児うつの解消までにかかる時間のばらつきは、自身の育児うつと向き合って主体的に原因解消に向けて動き始めるまでの期間が人によって違うことが大きいかもしれませんね。早めに「育児うつかもしれないな~」と自分で気づくことで原因と向き合うことができれば、パパの場合はママに比べると育児うつを解消しやすい傾向にあるのかもしれません。
以前に育休パパにヒアリングした際には「漫画喫茶で3時間漫画を読んだら気分が楽になった。」、「友達とフットサルをしたら気持ちが晴れた。」、「妻と相談して朝に30分ランニングさせてもらう時間を作るようになったらうつうつが解消して、家族への優しい気持ちで接することができたし、育児も楽しくかんじられるようになった。」という声もありました。
無理せずに気分転換の時間を持つことで、かえって育児が楽しくできて、家族もハッピーになるかもしれませんね。
お二方からのメッセージ
最後にお二方からメッセージを頂戴したのですが、お二方とも口をそろえて「育児は一人でやるものではなく、みんなでやるもの。辛い時は、一人で抱え込まずに周りに辛いと伝えて助けを求めよう。」というものでした。
パパは負けず嫌いというか、育児をがんばるぞ~と意気込んで頑張りすぎてしまうことがあるかもしれないので、あまり気負わずに気持ちを楽に育児にあたることも大切かもしれません。
それに、「正しく育児をするという考え方も避けた方がいいかもしれません。」というコメントも。
育児は時代が変われば正解は異なりますし、同じ時代でも文化や習慣によって多様なものです。それに、赤ちゃんによって個性もありますので、万人にとって正しい育児というものはそもそもないかもしれません。むしろ、育児書のマニュアルを正解と思わずに大きな方針として柔軟にとらまえ、臨機応変に自分のできる範囲で育児をすることも大切です。自分のできる範囲を超えたら助けを求めることも大切な育児です。
最後に
実は、今回の記事は2024年1月6日に実施したイベントの内容を抜粋してまとめたものでした。
パパ育コミュでは、定期的にこうしたオンラインイベントを行って育児の当事者としてのパパ目線で情報発信をしたりしています。
ちなみに、今回の記事作成を企画しているのはヤマモトさんとシカゴリラ(執筆)です。
コミュニティにご興味がある方は良かったらHPも見てくださいね。
※イベントの動画もコミュニティにおいてアーカイブしてたりしますし、データももう少し詳しいデータも手元にはあったりもしますので、ご興味がある方はお問合せ下さい。
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