「女性の産後うつ」については、男性が育休を取得する必要性として母体の回復とあわせて真っ先に挙げられることから社会に周知されつつあります。
産後の女性の10%が経験すると言われ、産後うつを発症した女性は家事や育児を担うことが難しく、症状がひどい場合は死に至ることもあります。
一方で、「男性の産後うつ」についてはほとんど認識されていません。
しかし、実際には男性の育休経験者の実に約6割が育休中に“うつうつ“とした気持ちを感じています。
本記事では、「男性の産後うつ」の「実体験」、「症状」、「理由」、「対処方法」について紹介していきます。
体験記から見る“うつうつ“とした気持ち
体験記における“うつうつ“した気持ちを見ていきましょう。
育休中は家族以外と関わる時間は極端に少なく、引きこもり状態でした。 妻の病状も安定せず、妻と義母との関係を取り持つことにも疲弊し、生後10カ月を経過した頃には心身ともにボロボロとなっていました。 ある朝、私は突然無力感に襲われ、息子を義母に預け東京の実家に帰ってしまいました。 いわゆる家出です。 幸い、両親の支えもあり2泊3日の休養で心身ともにリフレッシュでき、再び家族のもとに帰ることができました。 息子と再会した際、息子が泣きながら一生懸命にハイハイをして私に抱き着いてきた時のことは今でも鮮明に覚えています。 |
【産後1ヶ月間】とにかく、自分ではなく娘のサイクルに適応することが一番大変だったと記憶しています。 恥ずかしい話ですが、我が家での娘との共同生活が始まった2日目で、夜間のケアが辛すぎて、妻と、手伝いに来てくれていた義母の許しを得て日中リフレッシュするために一人で外出させてもらいました。また、ストレス性の帯状疱疹にもなってしまいました。ストレスが表出することが今まで無かったので、私にとっては相当なストレスだったのだと思います。 |
○外からのコミニュケーションが無くなる孤独感仕事をしている時は社内や社外の方とコミュニケーションをとる機会があるため、社会と触れながら生活しています。 それが育児休暇に入ったとたん家中心の生活にガラッと変わったので、環境の変化に戸惑いを感じました。 そのため、僕の場合は外部とのコミニュケーションがほしくてSNSをはじめたり、買い物に積極的に行くなどして気持ちをリフレッシュさせています。 ○3時間毎の授乳育児休暇中に最も体力的に辛かったのが、夜中の授乳です。 特に我が子は双子なので、妻と一緒に深夜に起きては双子にミルクを飲ませていますが、ぐっすり睡眠ができないというストレスは身体にも影響がでてしまうので慣れるまでは本当に辛かったです。 育休中は家に籠る時間が増えてウツウツとした気持ちになることもあるため、皆さん何かしらの方法で気持ちをリフレッシュできる方法を見つけておくと良いいと思いますよ。 |
産後うつの症状
産後うつの典型的な症状としては以下のようなものが挙げられます。
■精神的症状:気分が落ち込む、不安になる、イライラする、集中力・記憶力の低下、子供への愛着の低下、自殺願望 ■肉体的症状:身体的には、眠れない、体がだるい、疲れが取れない、頭痛、食欲低下 |
こうした症状は程度の多寡はあれども先述のように男性育休でも見られます。
産後うつは、女性だけではなく、男性の問題でもあるのです。
「男性の産後うつ」の3つの理由
次に、なぜこうした男性の産後うつが生じるのか理由を見ていきましょう。
理由①「急激な環境変化」
男性育休を取得する人の多くは20代後半から40代前半の男性です。働き始めてから年数が経ち、仕事にも慣れ、知力体力共に優れた時期であることから職場で頼りにされる存在であることが多いかもしれません。
しかしながら、育休中は環境が大きく変化します。
まず、職場は会社から家庭に移りますし、業務内容も一転します。
加えて、勤務形態も週5日1日8時間労働から週7日1日24時間労働(適宜仮眠有り)に変化します。
こうした育休に伴う環境変化は精神や肉体にストレスとなります。
理由②「頑張りすぎてしまう」
育休中の父親、特に、育休初期においては環境の変化に順応するため、また、新生児が産まれた喜びから家事や育児を頑張ろうという気持ちが働き、時には頑張りすぎてしまうことも。
そうした過度な頑張りはストレスとなります。
早い人だと育休に入ってすぐに不調をきたす人もいますし、中にはゆっくりとボディーブローのように影響が出てくる人もいます。
ゆっくり影響が出てくる人の特徴としては、はじめこそ新生児が家にいるという非日常的な出来事の中で気持ちが高揚しているので気付かないのですが、家事や育児が少しづつ日常に変わってきた頃に蓄積されたストレスにより不調をきたします。
このように「頑張りすぎること」はストレスとなります。
理由③「思い通りにならない育児」と「蓄積される家事」
新生児のお世話は大変です。
お腹が空いたことによる不快、暑さや寒さによる不快、オムツが濡れたことによる不快等をまとめて「泣く」という一つの表現で訴えかけます。
同じ泣くでも理由はそれぞれ異なり、それを親がくみ取って乳児の要望に応えなくてはなりません。
加えて、「黄昏泣き」に代表されるように、ただ泣きたいから泣いていることもあったりします。
何が正解かわからない中で「泣く理由」を暗中模索すると心が擦り減っていきます。
新生児の相手をしていると時間はいくらあっても足りず、結果として家事は全く片付かずに食器や洋服が積み重なっていき家の中はめちゃくちゃに。
職場で仕事をバリバリとこなしていた父親はこんなはずではなかったとストレスを感じます。
【コラム】「新型コロナウイルス」が“うつうつ”した気持ちに拍車をかける 新型コロナウイルスによる様々な制限もストレスの原因となります。 出産や育児においても「新型コロナウイルスだから」と色々なことに制限がかかります。 例えば、「出産の立ち会いはできません」、「産後も赤ちゃんの面会において友人や知人を呼ぶことは控える必要があります」、「お宮参りやお食い初めといったイベントも場合によっては控える必要があるかもしれません」、「外出規制が出れば、子供を連れて散歩に行くのも躊躇われます」ということが挙げられます。 特に、外出規制で散歩ができないことはストレスとなります。 “うつうつ“とした気持ちも、陽の光を浴びながら散歩すると晴れるものです。 しかしながら、新型コロナウイルスで外出規制となる中、家に閉じ籠って家事や育児を続けていると、気分転換をすることができずにストレスが溜まってしまいます。 このように、新型コロナウイルスによる行動制限が鬱々とした気持ちに拍車をかけることがあります。 |
「男性の産後うつ」への3つの対処方法
対処方法①「頑張りすぎない」
育休に入ったばかりの頃は環境への順応や赤ちゃんが生まれたことへの高揚感等から家事を頑張ってしまうことがあります。
睡眠時間を削ったり、栄養価の高い食事をたくさん作ったりと無理をしがちです。
ただ、頑張りすぎて父親がダウンしては元も子もありません。意識的に頑張りすぎないようにしましょう。
もし、家事や育児が辛くなってきたら、少し休んで肩の力を抜きましょう。
辛い時は辛い旨を周囲に正直に伝えて助けてもらいましょう。無理は禁物です。
対処方法②「自分の時間を作る」
家事や育児に忙殺されて、1日24時間(適宜仮眠)目まぐるしく父親として働いていると精神的にも肉体的にも疲弊します。
たまには父親以外、つまり「自分の時間」も確保にしましょう。
例えば、早朝に起きて30分間筋トレをしたり、外を走って体を動かしてはどうでしょうか。
パートナーや親に頼って昼間に家を開けて日中に一人で出かけて、喫茶店で書物を読むのもいいかもしれませんし、漫画喫茶で惰眠を「ぼーっ」とするのもいいかもしません。
時には友達との飲みに行くことも良い気分転換になります。
パートナーや親に負担を掛けることに気が引けるのであれば、行政や民間の育児サービスを利用することをおすすめします。
対処方法③「仲間を見つける」
仲間を見つけて悩みを共有することも大切です。
ただ、ママ友を見つけることに比べてパパ友を見つけるのは大変です。
平日に児童館や公園に行ってもパパはいません。
そもそもママでさえママ友を作るのに気を使っているのに、パパがママ友を作るのはハードルが高いかもしれません。
もし、周囲にパパ友が作れそうにない時は、少し遠出してパパコミュティの集まりに参加するのもいいかも知れません。
長時間にわたり家を開けられない場合は、自宅でできるSNSも魅力的です。
【コラム】ママ友はできるのか!?
育休中のパパが平日に公園や児童館に行くと、そのほとんどが子連れのママで、パパの姿はごくわずかかもしれません。
そんな時にママに話しかけていいのか戸惑う気持ちもあるかもしれませんが、話しかけてみると気さくに話してくれる方も多くいらっしゃいます。
上表は、ママ友のコミュニティーにパパが日常的に参加することに対して抵抗を感じるかをママに質問した回答結果です。
ママの回答としては「抵抗を感じない」が45.4%と最も多く、次いで「ほぼ抵抗を感じない」が26.1%となっています。
中には抵抗を感じるという回答もありますが、多くは好意的な回答となっています。
初めはママに声を掛けることに戸惑うかもしれませんが、積極的に話かけてみると育児談義が盛り上がるかもしれません。
「男性の産後うつ」に注意
男性の産後うつは、その存在がほとんど知られていないため、ともすると見過ごされてしまいます。
しかし、これまで男性育休体験をヒアリングしたパパさんの実に60%が“うつうつ“した気持ちを経験していることが分かっています。
今後男性育休が普及していく中で、おそらくこうした「男性の産後うつ」が増えてくるのではないでしょうか。
これから男性育休を取得しようとする人は、育休に入る前に「男性の産後うつ」について十分に認識して予防すると共に、万一“うつうつ“した気持ちになったら「頑張りすぎない」、「自分の時間を作る」、「仲間を見つける」の3つの対処方法を実践してみて下さい。
アンケート調査への協力依頼
「体験記」に関するヒアリングから見えてきた「産後うつ」に関する実態について、アンケート調査を実施します。
本調査の目的は「産後うつ」に関して以下の事項を明らかにしていことです。
- ・「男性の産後うつ」の実態調査
- ・「男性の産後うつ」と「女性の産後うつ」の比較分析
- ・男性の育児参加(育休取得を含む)による「女性の産後うつ」への効果検証
是非ご協力ください!
ご協力をお願いいたします。
以上、「【男性の産後うつ】知らないと危険、「男性の産後うつ」の実態と3つの対処方法!」
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