【なぜ男性育休が必要か!?】男性育休の「13のメリット」を「3つの視点」から徹底解説!

データで見る男性育休

男性育休を強力に推進するために現在政府は男性の産休制度の創設や育休制度の説明義務化等に向けた法改正を検討をしています。

こうした社会背景に受け、育休に対して興味を持つ男性が増えているのではないでしょうか。

ただ、一方で男性育休の育児休業取得率は2019年度でも7.48%と低迷しています。

この一因として男性育休のメリットが周知されていないことが挙げられます。

そこで本稿では男性育休のメリットを「家族」、「企業」、「政府」の3つの視点から男性育休の13のメリットをどこよりも詳しく説明していきます。

■家族にとってのメリット
○母親にとってのメリット
①育児負担の低減と産後うつのリスク低下
②早期の職場復帰

○夫婦にとってのメリット
③男性育休を取得して熟年離婚を回避
○父親にとってのメリット
④子供の成長を間近で見ることができる
⑤育児出向を通じた人材育成

○子供にとてのメリット
⑥子供の愛着形成と健全な成長
○兄弟へのメリット
⑦子供の赤ちゃん返り防止
■企業のメリット
⑧労働生産性の向上(働き方改革)
⑨社員のモチベーションの向上
⑩企業イメージの向上
⑪有能な人材の確保〜女性活躍と若手の獲得〜
⑫助成金

■社会にとってのメリット
⑬少子化対策

きっと、この記事を読めば男性育休の取得を迷っていた人も自信を持って取得に向け一歩を踏み出せるはずです。

  1. 家族にとっての7つのメリット
    1. 母親にとっての2つのメリット
      1. メリット①育児負担の低減と産後うつのリスク低下
      2. メリット②早期の職場復帰
    2. 夫婦にとってのメリット
      1. メリット③男性育休を取得して熟年離婚を回避
    3. 父親にとっての2つのメリット
      1. メリット④子供の成長を間近で見ることができる
      2. 【コラム】子供とママの写真をたくさん撮ろう。
      3. 【コラム】育休中は悔いが無いように!
      4. メリット⑤育児出向を通じた人材育成
        1. ■育児出向の内容
        2. ■育児出向の意義
      5. 【コラム】育児出向による経営人材の育成〜経営のバランス感覚とガバナンス〜
    4. 子供にとってのメリット
      1. メリット⑥愛着形成と健全な成長
      2. 【コラム】父親に対しても愛着形成する!?
    5. 兄弟へのメリット
      1. メリット⑦子供の赤ちゃん返り防止
      2. 【コラム】男性育休アンケートから見る男性育休のメリット
  2. 企業のメリット
    1. メリット⑧労働生産性の向上(働き方改革)
    2. メリット⑨社員のモチベーションの向上
    3. メリット⑩企業イメージの向上
      1. くるみんマーク
      2. イクメン企業アワード
    4. メリット⑪有能な人材の確保
      1. 女性の早期復職
      2. 有能な若者人材の確保
      3. 【コラム】中小企業をめぐる人材不足と男性育休
    5. メリット⑫助成金
      1. 給付額
      2. 給付要件
        1. 育児休業の取得についての要件
        2. 育児目的休暇の導入・利用についての要件
        3. コラム:自治体からの助成金
  3. 社会にとってのメリット
    1. メリット⑬少子化対策
    2. 【コラム】男性育休は少子化対策につながるのか
  4. 最後に

家族にとっての7つのメリット

男性育休は家族の構成員である「母親」、「父親」、「夫婦」、「新生児」、「兄弟」にとって7つのメリットがあります。

母親にとっての2つのメリット

育休取得はまずは母親にとって大きなメリットがあります。

メリット①育児負担の低減と産後うつのリスク低下

母親の体は、出産に伴う肉体的な負担や産後訪れるホルモンバランスの急激な変化に伴う精神的な不安定さにより、言葉を選ばなければボロボロの状態になっています。このような状態において家事に加えて、新生児の育児をするのは大変です。

新生児は、2〜3時間ごとにミルクを欲しがり、寝かしつけようとすれば背中スイッチが発動し(ベットに置いた瞬間に泣き始める行為)、おまけに「オムツの不快」、「体調不良」、「温度や湿度の違和感」等を全て泣くという一つの表現で主張するので大変に骨が折れます。母親のみに負担がかかりすぎると産後うつを発症し命を脅かすすリスクすらあります。

こうしたパートナーにかかる育児負担を大幅に軽減し、産後うつを予防することが男性育休の大きなメリットです。

メリット②早期の職場復帰

男性が育休を取得することで、パートナーの精神的及び肉体的な負担は減少しますので、産後の体の回復が早くなります。加えて、男性が育休を取得する事で職場復帰する際にもサポートすることができます。その結果、パートナーが早期に職場復帰することが可能になります。

早期に職場復帰することで女性にとっては「キャリア形成を阻害するリスクが減少」というメリットが、また、会社にとっては「職場の人員不足が早期に解消」といったメリットがあります。

このように、男性育休は女性の早期の職場復帰を可能にし、女性と企業の両者にとってメリットがあります。

夫婦にとってのメリット

メリット③男性育休を取得して熟年離婚を回避

産後のホルモンバランスの変化による生理的な現象として、パートナー(ママ)のパパに対する愛情は大きく下落します。ただし、産後一年間に家事や育児に積極的に携わっているとママのパパに対する愛情は徐々に回復する傾向にあります。

一方で、家事や育児に非積極的な場合は愛情曲線はどうなるのでしょうか。

女性の恨み辛みというのは男性のそれとは性質が異なり、時間が経てば消えるものではなく、時間とともに利息がついていく性質があります。産後1年間の家事や育児を手伝わなかったばかりに愛情曲線が回復しない場合、子供が大きくなった頃に愛情がゼロに漸近していきます。そこに待っているのは、夫婦水入らずの時間ではなく、家庭内別居や熟年離婚等の暗い未来です。

人生100年時代において老後を二人で仲良く過ごすためにも男性育休は重要なのかもしれません。

父親にとっての2つのメリット

メリット④子供の成長を間近で見ることができる

得てして一番大切なものは失って大切なことに気づかないものです。育児も同じです。結婚して子供が生まれれば当たり前のように育児をしなくてはいけなくなりますが、本当は育児とはとても大切なことです。人生100年の本当に僅かな時間しか関わることのできない行為です。加えて、世の中には育児がしたくても叶わない人がたくさんいます。子供が欲しくてもできない方、子供ができても病気で子供と離れて暮らさざるおえない方、子供を残して亡くなる方、こうした方はどんなに望んでも育児をすることが出来ません。子供の成長を間近で見ることは特別なことなのです。

そして、赤ちゃんの成長は予想以上に変化に富んでいて面白いです。自分で何も出来なかったら新生児が3ヶ月もすると首が座り、5ヶ月頃には寝返りをするようになります。半年もすればずり這いをはじめ、ハイハイをしてつかまり立ち、一年後にはよちよち歩きをするようになります。こうした赤ちゃんの成長を間近で見ることは何にも変えがたい幸せです。

このように、赤ちゃんの成長を間近で見ることができることが父親にとっての育休を取得するメリットです。

【コラム】子供とママの写真をたくさん撮ろう。

ママが一人で育児をしていると、なかなか子供の成長を残す余裕がありません。まして、子供とママのツーショット写真を撮影する機会はほとんどなかったりします。もし、パパが育児休暇を取得出来たら、たくさん子供とママの写真をとることをおすすめします。

【コラム】育休中は悔いが無いように!

長期の育休を取得する場合は、育休の初期(生後直後〜3ヶ月)は家事や育児に大忙しですが、少し余裕が出てきた段階で普段できないこと(長期旅行、副業等)、育休復帰に向けた準備(資格取得や転職活動等)をすることも出来ます。もし、そんなことを考えているのでしたら、きちんと計画を立てることをお勧めします!
もし良かったらまろさんのブログ(育休から復帰して一ヶ月、育休父が育休中にやっておけばよかったと思うこと)もご参考に!

メリット⑤育児出向を通じた人材育成

育休は、“休“という文字が使われていますが、決して“休暇“ではありません。職場の仕事を休んで、家庭で育児や家事等の仕事を担うということです。

であるならば、育休は職場から家庭への出向、つまり「育児出向」という架空の人事制度を通じた人材育成と捉える考え方もあるかもしれません。

以下では架空の人事制度である育児出向の制度内容と意義について想像力を豊かにして記載します。

■育児出向の内容

育児出向は、「育児を目的とし、一定期間職場を離れて家庭に入りパートナー(ママ)と共同して育児に励むための出向」です。

■育児出向の意義

育児育児出向では、パートナーや親族、自治体、地域住民と協働して新生児を立派に育て上げることを目的としたプロジェクトを遂行します。プロジェクトリーダーはパパとママです。当該プロジェクトにおいては、従前の職場とは異なる新しい環境で未経験の業務に携わります。

新生児を育て上げるため、失敗すると命に関わる任務でプロジェクトリーダーは重責を担います(危機管理能力)。勤務時間はパートナーと連携しながら24時間体制です(ストレス耐性)。必要に応じて周囲を巻き込無ことが重要ですが、その場合はファシリテーション能力が求められます(ファシリテーション能力)。また、多くの管理能力が必要で、毎日の新生児の睡眠、食事や排泄はもちろん、身の回りの美品の買い出し等の生活管理(業務管理能力)、減少する収入での収支管理(収支管理能力)、加えて、親戚周りやお宮参り、お食い初めといったイベントに向けた目標管理も求められます(目標管理能力)。最後に、育児休暇を通じて会社以外の社会との関係性を深めることで会社を客観的に捉えることが可能となります(客観力)。

このように、新生児の育児というプロジェクトを完遂し、様々な能力を身につける事でビジネススキルを向上させるのが育児出向です。

育児出向という制度は架空の制度ですが、男性育休は人材育成の観点からもメリットがあります。

【コラム】育児出向による経営人材の育成〜経営のバランス感覚とガバナンス〜

昨今の法令遵守の重要性の高まりやグローバル化、ダイバーシティ推進等に伴い、企業経営の攻守において、外部目線ともいうべき経営のバランス感覚やガバナンス意識は重要になっていると感じています。コーポレートガバナンスコードの適用等によって日本企業における社外取締役の導入が進んでいますが、これはまさに企業経営における外部の目線の必要性を示すものであり、こうした外部の目線は社外取締役以外の社内取締役や従業員においても持つべきものではないでしょうか。であれば、育児出向はバランスの取れた経営者を育成するための貴重な機会だと考えられます。

子供にとってのメリット

メリット⑥愛着形成と健全な成長

子供は何か不安があると泣き声を上げて母親を呼んだり、母親にしがみついたりします。こうした母親との精神的な絆のことを児童精神科医のボウルビィ氏は愛着(アタッチメント)と呼び、その形成過程を愛着形成と名付けました。愛着形成は生後6ヶ月から2歳頃までに形成されると言われています。

愛着形成がうまくいけば、子供は母親に対して安心感を抱くようになり精神的に安定します。そして、この精神的安定が大人へと成長する過程で母親以外の他者に対して信頼関係を築いていくのに重要となります。いうなれば、愛着を形成した母親が安全基地であり、母親以外の他者が冒険のようなイメージです。冒険するためには安全基地が必要なのです。そのため、この愛着形成は子供の健全な成長にとって不可欠なものです。

この愛着形成のメカニズムはオキシトシンというホルモンを介して起こります。このオキシトシンはストレスを緩和したり、安心感を高める作用があり、別名「愛情ホルモン」とも呼ばれています。

母親の体内では赤ちゃんと接する際、特に授乳時にオキシトシンを多く分泌されます。このオキシトシンが母乳を介して赤ちゃんの体内に入ったり、母親に抱かれながらお温もりを感じたりや心音を聴いてリラックスすると赤ちゃんの体内でもオキシトシンが作用して母親に対する愛着を増していきます。こうした過程を積み重ねる事で少しずつ赤ちゃんの母親に対する愛着が形成されていきます。

このオキシトシンを介した愛着形成のメカニズムは、母親がリラックスしていないと阻害されることがあります。例えば、母親が睡眠不足であったり、疲れていたり、イライラしていたりするとオキシトシンの分泌が阻害されますし、赤ちゃんも敏感に母親に違和感を感じて緊張してしまい、結果として愛着がうまく形成されないことになってしまいます。

もし、そこに父親がいたらどうでしょうか。家事を一手に引き受けたり、美味しいご飯を作ったり、睡眠不足にならないように昼寝の時間を作ってあげたり、肩こりがひどい母親の肩をさすってあげたりと、母親がよりリラックスして授乳できる環境になるのではないでしょうか。その結果、オキシトシンを介した赤ちゃんと母親との愛着形成が促進されていきます。

このように、男性の育休は赤ちゃんの愛着形成を通じて子供の健全な成長にとってメリットがあります。

【コラム】父親に対しても愛着形成する!?

愛着形成の対象は母親が中心ですが、父親が赤ちゃんと接することで赤ちゃんの体内でオキシトシンが分泌されることが知られています。父親が積極的に育児に携わり、オムツの交換や寝かしつけ、また、授乳といった育児を担うことで、赤ちゃんは父親に対しても愛着形成をしていきます。赤ちゃんにとって、安全基地となる愛着形成の対象が2つあることは、健全な成長にとって大きなプラスになるに違いありません。

兄弟へのメリット

メリット⑦子供の赤ちゃん返り防止

赤ちゃん返りとは、下の子の出生に伴い子供が赤ちゃんのような行動をとることです。赤ちゃん返りの症状は2〜3歳頃の子供に出ることが多いのです。ただ、幼稚園児や小学生になっても赤ちゃん返りは出ますし、特に年齢が上がると赤ちゃん返りなのか反抗期なのか良くわからず、赤ちゃん返りのシグナルを見落とすこともあります。

この赤ちゃん返りの代表的な症状として以下のような行為があります。

  • おっぱいを欲しがる
  • すぐに抱っこして欲しがる
  • 着替えさせて欲しがる
  • おねしょをする
  • 夜泣きをする
  • わがままを言う

こうした赤ちゃん返りの原因は「親の愛情や関心を独り占めしたい」と言う独占欲です。

赤ちゃん返りは、愛情を思い通りに受けられていないと言う子供のSOSです。そのため、無理に叱って矯正しようとするのではなく、しっかりとかまってあげなくてはいけません。そして、かまってあげる中で親の愛情を確認し、自分が愛されていることを理解させなければなりません。平均して、自分が愛されていることを理解し、赤ちゃん返りの症状が引くまでに5.3ヶ月かかると言うデータがあるそうです。

ただ、母親一人で家事をしている場合は赤ちゃん返りをしている上の子をかまってあげる余裕はないかもしれません。例えば、上の子が2歳の嫌々期の真っ只中や3歳になって幼稚園に入園するタイミングで下の子が生まれた場合、母親一人で家事や育児をこなすのは想像を絶する大変さです。

そんな時に、父親がそばにいれば赤ちゃん返りした上の子の面倒を見ることが出来ますし、もしくは、父親が下の子の面倒を見ることで上の子が母親を独占できるかもしれません。そうすると、子供は親の愛を確認することができます。

このように、第二子以降の出生において男性の育休を取得することは、子供の赤ちゃん返りに対応すると言う点でもメリットがあります。

【コラム】男性育休アンケートから見る男性育休のメリット

このように、「育児に携わり育児の大変さが分かった」が90.4%と最も多く、次いで「子供への愛着が増した」が86.7%、「家族との理解や絆が深まった」が85.2%となりました。男性が育休を取得する事で家庭との絆が深まり、育児の大変さを学んだ男性は、愛する子供のため、愛するパートナーと共に分担しながら子育てに励むのでしょう。男性育休はそんな理想的な子育て家族が形成されるきっかけとなっているのかもしれません。

企業のメリット

男性が育児休業を取得することは、企業の視点からの5つのメリットがあります。

メリット⑧労働生産性の向上(働き方改革)

男性が育児休業を取得することで、家事や育児に関する当事者意識が増します。その結果、定時退社、また、早帰りや有給取得をすることで家庭で過ごす時間を増やそうという動機が生じます。その結果、時間効率を意識した働き方が促され労働生産性が向上します。

メリット⑨社員のモチベーションの向上

育児休業を取得することによって仕事へのモチベーションが向上することがあります。実際に、男性育休アンケートにおいても育休を取得した事で仕事へのモチベーションが上がったという回答が37%、会社への愛着が増したという回答が16.3%ありました。育休を取得することで仕事に対するやる気が向上し太社員は会社にとって魅力的ですし、そのうち、会社への愛着が増した社員は長期にわたって会社のために勤労してくれることが期待できます。

このように、育休取得は社員の仕事のモチベーションを上げる意味で会社にとっては非常に大きなメリットとなります。

メリット⑩企業イメージの向上

労働者の育児参加に積極的な企業に対しては以下のような認定制度や表彰制度があります。こうした認定や表彰を受ける事で企業イメージの向上につながり、取引先の拡大や人材獲得に有利になります。

くるみんマーク

「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。

次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。
この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」です。

イクメン企業アワード

男性が育児をより積極的に楽しみ、かつ、育児休業を取得しやすい社会の実現するを目指す「イクメンプロジェクト」の一環として、2013年度より働きながら安心して子どもを産み育てることができる労働環境の整備を推進するため、男性の育児と仕事の両立を積極的に促進する企業をイクメン企業アワードとして表彰しています。受賞企業の取組内容はホームページ等に掲載し、ロールモデルとして普及させていくことにより、企業における育児と仕事の両立支援と男性の育児休業の取得を促進しています。

メリット⑪有能な人材の確保

少子化に伴い労働人口が減る中で有能な人材を確保することはどの企業においても経営の根幹に関わる大きな問題です。この人材確保の観点からも男性育休は2つのメリットがあります。

女性の早期復職

これは女性の早期の会社復帰が促されることと表裏ですが、企業にとっては人口が減少する中で有能な人材を確保する意味で女性の力が不可欠です。そうした意味では、女性が働きやすい社会を作るために、女性の早期の会社復帰をサポートするという意味でも男性の育休にはメリットがあります。

有能な若者人材の確保

男性育休の取得を推進する企業は若者が就職先を選定する際に魅力として映ります。

男子学生のうち将来的に「育児休業をとって積極的に子育てしたい」を選択した割合は2020年卒では43.6%に上ります。そのため、男性育休を企業として推進することで企業イメージの向上につながり人材確保においてアドバンテージとなります。

【コラム】中小企業をめぐる人材不足と男性育休

男性育休を取得することに中小企業の7割が反対の意向を示した調査結果が日本商工会議所から提示されマスコミで取り上げられましたが、その主因として挙げられたのが人材不足です。人材が少なくマンパワーが少なかったり、属人的業務が多い傾向にある中小企業では一人のキーパーソンが抜けるダメージを組織的にカバーすることが難しいことがあります。つまり、男性育休によって短期的には職場の仕事が回らなくなることへの懸念があります。

ただし、前述のとおり男性育休が普及する事で女性の早期復職が可能になったり、または、有能な若者の獲得につながるなど、中長期的には人材面でも男性育休にメリットがあります。

このように、男性育休は一見すると人材不足を引き起こすように見えますが、中長期的な視点では、むしろ男性育休を推進することが有益であることが分かります。

メリット⑫助成金


男性育休を従業員が取得すると、従業員には育児休業給付金が支給されますが、実は会社にも助成金が給付されます。具体的には、男性労働者が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りに取り組み、育児休業や育児目的 休暇を取得した男性労働者が生じた事業主には両立支援助成金が支給されます。

給付額

給付額は会社の規模や育児休業取得期間に応じて異なります。

給付要件

育児休業の取得についての要件

男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土作りのため、研修を行ったり資料を配布してする等の取組を行い、出生後8週間以内に開始する連続14日 (中小企業は連続5日)以上の育児休業を取得することが要件となります。
なお、男性労働者の育児休業取得前に個別面談を行う等、育児休業の取得を後押しする取組を実施した場合には個別支援加算が追加で支給されます。

育児目的休暇の導入・利用についての要件

育児目的休暇制度を新たに導入し、就業規則等への規定、労働者への周知を行うと共に、男性労働者が育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りのため研修を行ったり資料を配布する等の取組を行い、出生前6週間から出生後8週間の期間中に、合計して8日(中小企業は5日)以上所定労働日に対して取得することが要件となります。

コラム:自治体からの助成金

自治体においても男性の育児休業取得に対する助成金制度があります。例えば、東京都では公益財団法人東京しごと財団が、東京都と連携して男性の育児休業取得等を応援する都内企業・法人等を支援しており、男性従業員に連続15日以上の育児休業を取得させ育児参加を促進した企業に対して最大300万円の奨励金が支給されます。

社会にとってのメリット

メリット⑬少子化対策

2019年の出生数は90万人を割り込み、86万人まで減少しました。加えて、合計特殊出生率も1.36と低水準となっており、少子化が深刻さを増しています。少子化問題は年金・医療・福祉等の社会保障制度、労働力やGD P等、社会経済に多大な影響を及ぼすことされています。

こうした状況を踏まえて政府は2020年5月29日に新たな少子化社会対策大綱を閣議決定しました。その中では、「希望出生率1.8」を目標に掲げ、具体的な施策の一つである「男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備」において「労働者に対する育児休業制度等の個別の周知・広報や、育児のために休みやすい 環境の整備、配偶者の出産直後の時期の休業を促進する枠組みの検討など、男性の 育児休業取得や育児参画を促進するための取組を総合的に推進する」と記載されています。

このように、男性育休の社会的な意義としては、社会経済に多大な影響を及ぼす少子化への対策が挙げられます。

【コラム】男性育休は少子化対策につながるのか

少子化社会対策大綱における施策の一つとして掲げられている男性育休取得率の引き上げですが、実際に少子化対策として効果はあるのでしょうか。

男性育休取得者に聞いた男性育休が少子化対策に効果があるかを聞いた質問への結果が上図です。38.0%が「とてもそう思う」、30.7%が「そう思う」と回答しています。

同様の質問をママにもしたところ、32.7%が「とてもそう思う」、33.7%が「そう思う」と回答しており、男性育休取得者と概ね同様の結果となりました。

こうした結果から分かるように、男性育休経験者や世の中のママの多くが少子化対策として効果的だという意見が多数となっています。

最後に

本稿では政府が強力に推進する男性育休のメリットについて「家族」、「企業」、「社会」という3つの視点から13項目について見てきました。具体的な項目は以下のとおりです。

■家族にとってのメリット
○母親にとってのメリット
①育児負担の低減と産後うつのリスク低下
②早期の職場復帰

○夫婦にとってのメリット
③男性育休を取得して熟年離婚を回避
○父親にとってのメリット
④子供の成長を間近で見ることができる
⑤育児出向を通じた人材育成

○子供にとてのメリット
⑥子供の愛着形成と健全な成長
○兄弟へのメリット
⑦子供の赤ちゃん返り防止
■企業のメリット
⑧労働生産性の向上(働き方改革)
⑨社員のモチベーションの向上
⑩企業イメージの向上
⑪有能な人材の確保〜女性活躍と若手の獲得〜
⑫助成金

■社会にとってのメリット
⑬少子化対策

男性育休を取得することは多くのメリットがあることがわかりました。

こんなにもメリットが沢山ある男性育休ですから、今後パパになる人は是非前向きに育休取得を検討してはどうでしょうか。

コメント

  1. […] […]

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