男性育休取得率が伸び悩む中、政府が検討している目玉政策の一つとして「男性の産休制度」があります。
この制度は、妻の出産に伴うサポートをするために父親が産休を取得できるというものです。
本記事では、1年間育児休業を取得したシカゴリラが、「父親産休制度の背景」や「父親産休制度の概要」、最後に、「産休制度と有給休暇を組み合わせて取得すること」の3つのメリットを「収入面」や「手続き面」、「取得の柔軟性」から解説します。
父親の産休制度について興味がある方、今後男性育休の取得を検討されている方は是非ご一読ください。
父親産休制度の背景
父親産休制度の背景には男性育休取得率の低迷があります。
具体的には、第二次安倍晋三政権が2015年に少子化社会対策大綱にまとめた「男性育休取得率2020年13%」という目標値に対して、男性の育休取得率は過去低い水準で推移しており直近の2019年度において7.48%となっています。そのため、現状を打破するための目玉政策の一つとして「父親産休制度」の創設を政府は検討しています。
男性育休取得率が高い国は「男性の産休制度」を導入している
実は、「男性の産休制度」は海外においては既に制度として存在しています。
スウェーデンやドイツでは、出産直後の2週間程度の「男性の産休制度」が設けられていますし、男性育休に先進的なフランスでは2021年夏以降に最低7日間の父親の産休取得を義務づけることがマクロン大統領により表明されました(制度としては3日間の出生休暇と合わせれば最大で28日間取得できるみ見込み)。
このように、欧州では父親の産休制度が既に設けられている国も少なくなく、加えて、フランスではその義務化が表明されています。
こうした諸外国の男性育休取得率は実際に高いことが知られており、我が国としても育児休業と比較して短期間かつ給付率の高い「男性の産休制度」を創設し男性育休取得率を引き上げようという狙いがあります。
実際に、政府が2020年7月にまとめた「骨太の方針」においても「配偶の出産直後の休業を促進する枠組み」が盛り込まれています。
男性の産休制度の内容
2020年3月に自民党のプロジェクトチームが男性の産休制度を提案しました。
それを受け、政府は2021年通常国会で父親産休制度創設に向けた法改正、2022年度の実施を目指し、具体的な制度内容について厚生労働省が中心となり現在検討が進められました。
その後、男性の産休制度については以下の内容が12月14日に厚生労働省の労働政策審議会の分科会で以下の内容が提案されました。
取得可能な時期や取得日数:産後8週間までの時期に限り、4週間取得可能
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000705286.pdf
分割取得の可否:2回までの分割取得が可能
給付金水準:現行の67%から引き上げは見送られる
申請手続き:現行の1ヶ月前申請から2週間前申請に緩和される
義務化の有無:男性の産休取得対象者への企業からの制度説明が義務化
就業可能:予め予定されていた就労は可能
対象範囲:労働期間1年未満の非正規雇用を追加
そして令和3年6月に育児・介護休業法が改正されました。
男性の産休制度の内容についての考察
育児・介護休業法の改正に伴い新設される「男性の産休制度」の本来の目的と今回の改正内容を照らしあわせて、育児休業を取得したシカゴリラの視点で「男性の産休制度」を独断と偏見で考察してみます。
考察①給付金の水準(×)
大きな論点となっていた、給付金の水準の引き上げについては67%から変更されないということになりました。男性育休取得率のボトルネックの一つである収入面の負担は残念ながら改善されないこととなってしまいました。これは、女性の産休制度と給付水準との関係や財源確保等が問題となったと推察されますが、非常に残念です。
考察②取得の義務化(□)
大きな物議を起こした取得の義務化については、企業側に制度説明の義務化が課せられることとなりました。ただ、制度説明だけでは就業規則をメールで送付して事務的な作業で終わってしまう可能性もありますので、今後は意向確認を含めたより実効性のある義務化に向けた実務面の検討がなされていくことを期待します。
考察③就労可能(△)
大きな懸念として、予め予定れていた就労を可能とする制度案とする方針です。そのため、パソコンを持って帰って在宅勤務をする場合もあれば、工場に出勤して午前中だけ働くようなことも想定されます。こうした仕組みは、人材不足に強い懸念を示している中小企業に対する配慮だと考えられますが、男性の産休を取得したけどほとんど仕事をしていたという事態に陥る可能性を秘めています。
有給休暇と父親産休制度を組み合わせることで柔軟性UP!
父親産休制度の創設による男性育休取得率の引き上げについては、男性の育児参加を促す上で重要なことです。
ただ、産休制度に加えて有給休暇を組み合わせることで柔軟に産後のパートナーをサポートすることができます。
そこで、産休と比較した場合の有給休暇の3つのメリットを以下で解説します。
メリット①収入面のメリット
一つ目は、収入面のメリットです。産休制度では給付金の算定は「賃金月額(休業開始時賃金日額×支給日数)×給付率」で行われますが、現行の育児休業と同じ給付率67%となります。一方で、有給休暇を取得すれば100%となります。加えて、意外としあれていませんが、賃金月額にはボーナスは含まれませんし、給付額には上限が設けられています。
このように、収入面では有給取得をした方が大きなメリットがあります。
※育児休業給付金の給付額の説明は以下の記事に記載しています。
メリット②申請手続き
2点目として、申請手続きにおいてもメリットがあります。有給休暇を利用すれば申請は通常の有給休暇と同じです。一方で、産休制度の場合は父親産休の申請が必要です。具体的な申請手続きについては、育児休業の申請手続きの反省から簡素化(1ヶ月前申請から2週間前申請への変更)が検討されていますが、手続がなくなることはありません(従業員から会社への申請、会社からハローワークや年金事務所への申請)。
産後は病院にお見舞いに行ったり、親戚や友人に連絡をしたりとバタバタするものです。そうした忙しい時期に申請書を準備して上司の承認を得て人事部に提出するという作業は非常に骨が折れます。
そのため、出産後に申請書を急いで提出する手間を軽減するためにも有給休暇を取得することはメリットがあります。
※育児休業に伴う申請手続きは以下の記事に詳細に記載しています。
メリット③取得期間の柔軟性
3点目として、取得期間の柔軟性です。
父親産休制度では基本的には産後8週間の間に4週間程度取得することができます。一方で、有給休暇は産前でも産後でも好きな時期に有給休暇の残存日数だけ取得できます。例えば、出産予定日の1週間前から出産準備として有給休暇を取得することができますし、産後に2週間程度の有給休暇を取得すれば産休や育児休業の申請書を時間に余裕をもって提出することができます。加えて、有給休暇は柔軟に取得可能であるため、業務引き継ぎや業務繁忙時のサポートとして柔軟に仕事と育児をこなすことが可能となります。
このように、取得期間や日数についても有給休暇を利用するで柔軟に休暇を取得することができます。
※当ブログの運営者が実際に有給休暇と育児休業を利用して、効率的に職場と家庭の業務引き継ぎをした体験談は以下の記事に掲載しています。興味がある方は是非ご一読ください!
このように、有給休暇の取得は「収入面」や「手続き面」、「取得の柔軟性」の面でメリットがあります。
そのため、産休と有給のそれぞれの制度の特徴を踏まえて、両者を組み合わせながら休みを取得することで産後のパートナーを柔軟にサポートすることが可能となります。
まとめ〜産休と有給休暇を組み合わせることで柔軟に産後のパートナーをサポート〜
本記事では男性の産休制度の創設に向けた政府の検討の背景にある男性育休取得率が低迷する現状と欧米諸国における男性の産休制度について概観した上で、産休制度と比較した場合の有給休暇のメリットを「収入面」、「手続き面」、「柔軟性」の観点から3つから説明し、両者を組み合わせることでより柔軟に産後のパートナーをサポートできることを解説しました。
実は、産休制度と有給を組み合わせるという発想は日本において最も効果を発揮します。
エクスペディア社が実施した世界の有給取得率を比較が上表です。日本の有給取得は世界的にみて最低水準であり、多くの労働者において有給休暇が余っているのではないでしょうか。せっかく積み上げてきた有給休暇ですから産後のパートナーをサポートするために取得してみようというのが有給休暇と産休を組み合わせるという発想のベースにあります。
このように、有給取得率の低い日本の特性を活かして、産後直後には3つのメリットのある有給休暇を活用しながら、必要に応じて産休に切り替えていくことで柔軟に産後のパートナーをサポートしてみてはどうでしょか。
以上、「【男性の産休制度】「男性の産休制度」より「有給取得」をすすめる3つの理由!」でした。
男性育休体験記の「とあるパパさん」は有給休暇と育児休業制度を上手に活用して育休を取得されています。よろしければご一読ください!
コメント
[…] […]