#6 男性育休に向けた5ステップ①「パートナーへの相談〜“とるだけ育休“へのママの本音」〜

男性育休の現在と未来

これまで#2〜5では私が育休を取得するに至った経緯について記載してきました。具体的には「第一子出生児の反省」、「過去の男性育休経験者との出会い」、「人生の1%は家族のために」というタイトルで、育休を取得した理由と1年間という長期育休を取得するに至った経緯を綴りました。

今回の#6から#10においては少し視点を変えて、育休を決意してから実際の取得に至るまでのプロセスに焦点を移します。

昨今男性育休に関するニュースが耳目を賑わせています。男性の産休制度の創設、育児休業給付金の給付率の引き上げ、そして、男性育休の義務化等の政策が政府において現実的に検討されています。こうした社会動勢を受けて男性育休に関心を持つ方が増えてきています。

ただ、男性育休に興味があったとしても、具体的な育休取得プロセスが明確ではないと取得に向けて動き出しにくいものです。そこで、今回から5回に分けて“育休取得の5ステップ“と称して私自身や周囲の育休経験者の意見も踏まえながら具体的な育休取得プロセスを解説していきたいと思います。

具体的な“育休取得の5ステップ“とは以下のとおりです。

①パートナー(ママ)への相談
②社内育休制度の確認
③育休期間の検討
④金銭面の検討
⑤社内承認

では、今回は育休取得に向けた第一歩として、「パートナー(ママ)への相談」を取り上げたいと思います。

男性育休に向けた第一歩「パートナー(ママ)への相談」

男性が育児休業を取得するということは、パートナーであるママさんと協働で行う家事や育児において、男性の負担を増やすということですから、まずはママさんに相談する必要があります。

普通に考えるとパパが育休を取得して家事や育児の負担を増やすのであれば、ママの負担が減ることになります。そうであれば、ママは男性の育休取得に対して好意的に捉えているものと想定されます。一方で、昨今問題になっている“取るだけ育休“という現象もあります。“取るだけ育休“おは、男性が育休を取得して本来担うべき家事や育児をせずに、家でゴロゴロしたり趣味に時間を費やすことです。こうした、状況を踏まえてパートナーであるママは男性育休についてどのように考えているのでしょうか。

そこで、ママの男性育休に関する考えを捉えるために独自にアンケート調査を実施しました。その結果から見えてきたのは、多くのママが男性育休に対して賛成である一方で、育休前の日常生活において家事や育児に積極性が見られないパパに対しての冷ややかな目線でした。

アンケート結果から見る“とるだけ育休“への懸念

男性育休についてパートナーであるママがどのように考えているかを知るため、ママさんにご協力頂き男性育休に関するアンケート調査を実施しました。現在アンケート調査を鋭意実施中ではあるのですが、暫定結果からも多くの示唆があったので以下ではその結果に基づき”ママの本音”を見ていきましょう。

質問①「育休を取得して欲しいと思ったことはあるか」
質問②「日常生活におけるパパの家事や育児への積極性」
質問③「男性育休に対する満足度」
質問④「ママが求める育休期間」

質問①「育休を取得して欲しいと思ったことはあるか」

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まずは、「育休を取得して欲しいと思ったことはあるか」という質問の回答を見ていきましょう。「是非取得して欲しいと思ったことがある」、「取得して欲しいと思ったことがある」との回答がそれぞれ34%となっており、男性育休を求める意見が大半を占めています。出産というのは命がけの行為であり、男性が想像するよりも遥かに精神的にも肉体的にも過酷なものです。そうであれば、産後のママが求めるサポートをしっかりとする事は当然パパに求められる役割です。

男性育休を希望する理由としては、「出産年齢が上がっていることから親が高齢化しており親を頼りにできないため」や、「退職年齢が引き上がったことや共働きが一般的になってきたことで親が現役で働いており頼れないため」といった声がありました。こうした社会構造の変化も男性育休が求められる要因となっているようです。

一方で、中にはパパの育休を不要と考えるママもいます。男性育休取得について「どちらともいえない」が20.8%を占め、「取得して欲しいと思ったことはない」が11.9%を占めています。実に、30%を超えるママが男性育休について必ずしも肯定的ではないということは少し驚きです。

その理由としては、「育休を取得したとしても家事や育児の負担が変わらないため」が46.7%と最も多く、やはり“取るだけ育休“への懸念は拭えないことが分かりました。一方で、「職場での軋轢を生んで働きにくくなるため」という回答が40%あり、男性育休が一般的ではない現状におい育休取得をためらわざるをない職場の雰囲気があることをパートナーであるママですら感じていることが分かります。この問題は本当に根深いですね。

また、個別にいただいた意見として「里帰り出産でパパ以外の親族から十分なサポートを受けられる事」、また、「育休に伴い収入が減少するため現実的な選択肢として育休を選択しない」といった声がありました。

このように、パートナーは男性育休の取得を求める意見が過半数を占めている一方で、3割の方は必ずしも男性育休に対して必ずしも取得を希望していないことが分かりました。その理由は様々で、職場の軋轢への懸念、里帰り出産ができたり、金銭的な理由もありますが、多くは“とるだけ育休に対する懸念“にあることが分かりました。

質問②「日常生活におけるパパの家事や育児への積極性」

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パートナーであるママに対して、パパの家事や育児への積極性について質問したところ、「とても当てはまる」や「当てはまる」が大半を占めている一方で、「当てはまらない」、「まったく当てはまらない」が合計で約12%を占めています。この割合は育休取得を希望しないと回答した割合11.9%とほとんど一致します。

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では、実際に育休を取得したパパの家事や育児への積極性について質問した回答が上表です。これを見ると、「とても当てはまる」や「当てはまる」と回答した割合が84.1%を占めています。育休を取得するパパは育休取得前から家事や育児に積極的に携わっているようです。

このように、普段から家事や育児に積極的な姿勢が見られないと、パートナーは男性育休を取得しても“取るだけ育休“になってしまうと思われているのでしょう。加えて、実際に育休を取得したパパは育休取得前から家事や育児に積極的に携わっていたことがわかりました。育休を取得する上では、普段からの家事や育児に対する夫婦の協力関係が大切ということが分かりました。

質問③「男性育休に対する満足度」

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では、次に実際に男性育休を取得したパパに対してパートナーがどのように感じているのかとを見ていきましょう。育休を取得する前は“取るだけ育休“になるのではないかと懸念する声が少なからずありましたが、実際に取得した上での満足度に関する質問への回答が上表です。

「とてもよかった」が60%、「よかった」が12%となっており、男性育休取得に対して多くのママが満足していることがわかります。「どちらとも言えない」という回答も28%あり、所謂「取るだけ育休」が存在するという懸念も拭えない部分はありますが、逆に「よくなかった」、「とてもよくなかった」という否定的な意見はありません。育休取得の要望については賛否ありますが、実際にパパが育休を取得してみると、ママは概ね好意的に捉えられていることがわかりました。

産後のママは精神的にも肉体的にも疲弊していますので、そんな最愛のママを目の当たりにして、流石に普段は家事や育児に消極的な“取るだけ育休“を懸念されるパパさん達においても体が動くようになるのでしょう。実際、シカゴリラの周囲の男性育休を取得したパパさんにおいても育休前は仕事が中心の生活で家事や育児には積極的ではなったのですが、育休中にママを全力サポートして信頼関係を勝ち取った方もいらっしゃいます。このように、男性育休の取得がパパが家事や育児に積極的になるきっかけになることもあるのですね。

質問④「ママが求める育休期間」

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ここまでで“取るだけ育休“を懸念する声はあるものの、ママの多くはパパに育休取得を希望していることがわかりました。加えて、育休を取得したパパに対するママの評価が高いことも分かりました。では、ママはどの程度の育休期間を望んでいるのでしょうか。

「具体的にどの程度の期間の育休を取得して欲しいか」という質問に対するパートナーの回答が上表です。「1ヶ月以上〜3ヶ月未満」が50.0%、「2週間以上〜1ヶ月未満」が26.1%となっており、産褥期(出産後に体が妊娠前の状態に戻るまでの期間。2ヶ月程度)や床上げ(出産後に母体を休めるために敷きっぱなしにした布団を片付ける時期。産後3週間程度)までは最低限パパにサポートして欲しいというのがパートナーの意見であることがわかります。

加えて、「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」も約10%となっており、3番目に多い回答となっています。産褥期以降も言葉の通じない赤ちゃんと四六時中一緒にいるのは疲れるものですし、夫婦で育児の喜びを共有することは素敵なことですから、できることなら一緒に子育てをしていきたいという声がありました。

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ただ、こうした希望期間にわたって育休を取得できたかを質問したところ、実際に「希望通りの期間取得できた」と回答した方は16.3%であり、「希望よりも短かったが取得できた」が30.2%となっており、残念なことに「全く取得できなかった」が46.5%と半数近くを占めています。

男性育休取得率は徐々に増えてきていますが、なかなか希望通りに育休を取得できないというのが実情であることが分かってきました。

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希望とおりに育休を取得することは困難な状況ではありますが、現在ママとなっている回答者の方々に、将来的に次の子供が生まれることになった場合には男性に育休を取得して欲しいか質問してみました。すると、85.9%の方が「取得して欲しい」と回答しています。

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こうした、育休を取得できない現状と育休を取得して欲しいという意見のギャップを埋めるためにも、実に90%近くのママが男性育休が「普及して欲しい」と回答しています。

現在政府も男性育休取得に向けて給付金額の引き上げや男性育休の義務化なども検討していますが、男性育休が必要な人が必要なだけ育休を取得できるような世の中になることを切に願っています。

ケーススタディ:シカゴリラの場合

私は第二子妊娠前から育休取得については漠然と考えていました。そのため、第二子妊娠が決まった段階で今後の出産までの過程を妻と相談する会話の中で自然と育休取得について聞いてみました。

🦍「一人目の時にあまり家事や育児に携われなかったから、今回は出来るだけ参加したと思っているんだ。」

👩「それはありがとう。パパのサポートはとても助かる。」

🦍「せっかくサポートするんだから、いっその事こと育休を取得しようかと思っているんだ。」

👩「会社で育休が取れるの?」

🦍「そうだよ。育休は女性だけではなく、男性も取得できるんだ。これは労働者の権利なんだ。だから、会社に取得したいと申請すれば拒否できない仕組みになっているんだ。」

👩「けど、職場の人に迷惑がかかるでしょ。」

🦍「そうだね。それはその通りだと思う。けど、家族と仕事のどちらを優先するかと言えば、家族を優先したい。それに、仕事も優秀な若手が育ってきてくれているから早めに育休取得について会社の承認を得て引き継ぎをしっかりとすれば問題ないと思う。」

👩「育休を取得するのはありがたいけど、会社になるべく迷惑がかからないようにしようね。育休はどれくらい取るの?」

🦍「それはまだ考え中。制度としては1年間最長で取れるみたいだけど、職場の業務負荷もあるので最終的には上司と相談することになると思う。せっかく取得するのであれば出来るだけ長期間取得してみたいけど。まだなんとも言えないかな。」

👩「分かったわ。何かあったら教えてね。」

🦍「そうする。」

こんな具合で、育休取得について妻の賛同を得ることができました。具体的な育休期間や育休中に何をするかということは“ふわっと“していたのですが、まずは諾否のお伺いをしました。

私は日頃から家事や育児に積極的であったため、パートナーも家にいてくれたら助かると思ってくれたのではないでしょうか。日常から家事や育児に努めていてよかったです。

最後に〜育休だから家事や育児を頑張るは変だ!?〜

多くのママの協力を得て実施しているアンケート調査の結果から、ママが男性育休に対してどのように感じているかが浮き彫りになってきました。

その結果、多くのママは男性育休に対して好意的であることがわかりました。一方で、約3割の方は男性育休に対して懸念を示す声もあました。その要因としては、“育休を取得することで生じる職場の軋轢“を懸念する声もありましたが、最大の要因は“取るだけ育休“への懸念ということがわかりました。

普段から家事や育児に積極的な姿勢を見せていないパパは夫婦の協力関係に基づく信頼関係ができていこともあります。育休を取得しても家でゴロゴロするだろうから、パートナーからしてみれば「お昼ご飯を作る手間が増えるだけ」という悲しい意見もありました。

ただ、実際にパパが育休を取得したママに聞いてみると、多くが男性育休に対して満足しており、否定的な意見はありませんでした。きっと、最愛のママが精神的にも肉体的にも疲弊する姿を見て、普段は家事や育児に消極的なパパであってもやらざるおえない状況になったのではないでしょうか。男性育休を取得したことが家事や育児を始めるきっかけになるケースもあります。

しかし、こうした男性育休を求めるママの声に反して、なかなか男性育休の取得が思うようにいかないのも事実です。希望とおりに育休を取得できたのは16.3%に止まるという実態も見えてきました。

このように、男性育休に対するパートナーの意見をアンケート結果から様々な重要な示唆がありました。その中で一番大切なことは何かと言えば「日頃の夫婦の信頼関係」だと思います。

日頃から夫婦で家事や育児について協力していれば「夫婦の信頼関係」が築かれているため、当然“取るだけ育休“への懸念もなくなりますし、実際に育休を取得した際にパートナーの満足度も高まることになります。

男性育休を取得したから家事や育児を頑張るのではなく、男性育休を取得する前から家事や育児を夫婦で分担しながら信頼関係を築いていくことが大切です。そういう意味では、「育休は育休を取得する前から始まっているのかもしれませんね。

長文を最後まで読んでいただきありがとうございました。
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男性育休に向けた5ステップの記事一覧

①パートナー(ママ)への相談


②社内育休制度の確認


③育休期間の検討


④金銭面の検討


⑤社内承認

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