#8 男性育休取得に向けた5ステップ③「男性育休のおすすめの期間!育休は3ヶ月から!?」

男性育休の現在と未来

昨今男性育休がメディアで取り上げられています。男性育休義務化も検討されており、企業側に男性育休に関する説明を義務化するという声もあったりします。そんな中で、前回は男性育休の義務化をしてもそもそも男性育休制度が会社になかったらという視点で執筆しました。

今回は、男性育休義務化されたとして、具体的にどの程度の期間の育休取得をすれば良いのかについて検討していきます。そこで、まずは育児休業制度において取得できる育児休業の期間を概観した後に、育休期間ごとのパパの役割について説明します。最後に、現在実施中の男性育休に関するアンケート調査から見えてきた“オススメの育休期間“を紹介していきたいと思います。

1 育児休業制度

女性と同様に、男性育休の場合も育児・介護休業法では最長で1年間の取得が認められています。基本的には子が1歳に達するまでの期間に1度取得することになっていますが、パートナーと分担しながら家事や育児を担えるように、以下の2つの制度が設けられておりフレキシブルに育休が取得できるようになっています。

(1)パパ・ママ育休プラス
父母ともに育児休業を取得する場合、子が1歳2か月に達するまでの間に、1年まで休業することが可能となります。

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(2)パパ休暇
配偶者の出産後8週間以内に、育児休業を取得した場合(8週間以内に1回目の育休が終了)には、特例として育児休業を再度取得することができます。

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※https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/system/

2 育休期間ごとのパパの役割

育休期間を検討する上で大切なことは「パパとしてどの時期に何をサポートできるか」ということです。そこで、以下では育休期間ごとのパパの役割を記載します。

■5日間(退院まで)
パートナーと新生児が入院している時期です。パートナーは出産に伴う肉体的・精神的負担でボロボロの状態です。立ち上がりトイレに行くのも一苦労です。ママを極力動かないようにサポートしてあげる必要があります。必要な日用品を揃えて手の届く範囲に置いてあげることもそうですが、何よりも病院で新生児を観に来る親族や知人等の対応をすることが考えられます。特に、パパ方の親族の来訪時にはパートナーは気を使って無理しがちです。来客に対しては、赤ちゃんであれば十分に見ていってもらってもいいですが、パートナーからは早めに離れてもらいましょう。また、パートナーと新生児が戻ってくる家の準備する期間でもあります。床上げまで快適に過ごせるように布団の準備や湿度や温度管理がきちんとできるか確認しておきましょう。また、第二子以降の出生である場合は子供の面倒を見る必要があります。

■1ヶ月間(床上げまで)
産後1ヶ月程度で胎盤が剥離した悪露(おろ)が続く時期です。この時期はパートナーは基本的に自宅で寝ている生活です。パパとして家事や育児にできることは全てサポートしましょう。上げ膳据え膳が基本です。この時期にしっかりと休まないと産後の肥立ちが悪く出産前の体に戻ることができません。具体的には子宮復古不全(臨月に、胃のすぐ下の高さまで大きくなった子宮が、産後約4~6週間かけて妊娠前と同じ状態に戻るのを「子宮復古」という)や膀胱炎、乳腺炎等の症状が現れます。こうした症状が出た場合には産後から数年経っても無理をすると痛みが出たりと生涯に渡って後を引くこともありますので気をつけてましょう。加えて、出産祝いをいただいた場合はそのお礼をお返しする時期でもありますので、パパの出番です(携帯でポツポツ返礼品を選ぶ作業はママに気晴らしになったりすることもあるかもしれませんが)。

■2ヶ月間(産褥期まで)
産後2ヶ月程度でホルモンバランスが徐々に妊娠前に戻り、子宮の大きさも概ね元に戻ります。出産後1ヶ月で1ヶ月検診があるのでその頃から外出もできますし家事も少しずつこなすことができます。ただ、産褥期のこの時期は無理をすれば産後の肥立ちが悪くなります。産褥期の「褥(しとね)」という漢字は「寝たり座ったりする布団」という意味です。文字通り、パートナーが布団に横になっていることを前提とした時期だという認識でパパとして家事や育児に全力サポートが求められます。

■3ヶ月(お食い初めまで)
産後2ヶ月もすると体は妊娠前に概ね戻りますが、依然として骨盤は緩んでいますし、体を動かすと痛みがあることも。加えて産後のホルモン変化の影響でマタニティーブルーになりやすい時期でもあります。家事や育児をパートナーと共同で行うことは可能ですが、パートナーに無理をさせないことが前提です。また、産後100日でお食い初めがありますので、お食い初めの準備や段取りはパパの出番です。

■6ヶ月(離乳食が始まる頃まで)
産後3ヶ月以降はパートナーの体は概ね妊娠前の生活が送れるようになっており、無理をしなければ家事や育児をすることができます。しかし、妊娠前の生活が送れるようになっているからといって、妊娠前にはなかった夜泣き対応で睡眠が削られたり、授乳に伴い体の栄養を取られますし、オムツ替えや沐浴といった育児も加わってきますのでパパとして引き続きサポートが必要です。6ヶ月では早い子ですと離乳食が始まりますので、赤ちゃんにお粥等の離乳食を作ってあげましょう。

■12ヶ月(1歳のお祝いまで)
6ヶ月以降は子供は乳幼児から次第に幼児になっていきます。乳歯が生えてきたり、ずり這いをしたり、ハイハイをしたり、お座りをしたり、つかまり立ちをしたり、目に見えて成長をしていきます。こうした子供の成長を見ながらパートナーと家事や育児を共にこなしていくと夫婦の絆が深まっていきます。成長の記録として写真や動画をたくさん撮ってあげるのもいいかもしれません。1歳のお誕生日を迎えて一升餅を背負いながら必死で前に進もうとする子供の姿を見ながら、育休期間の子供の日々の成長を夫婦で懐かしむことができたりします。

このように、育休期間ごとにパパとして様々な役割があります。大切なのはパパとしての役割を認識して目的意識を持って育休期間を選択することです。そうする事で、効率的にパートナーをサポートしながら家事や育児を分担することができるようになります。逆に何の目的意識もないと“取るだけ育休“と言われてパートナーに三下り半を突きつけられて育休を早々に切り上げることになるかも💦

加えて、社内承認に向けてもパパの役割を意識することは大切です。社内承認においては、間違いなく上司からこんな質問を受けます。

ボス「この育休期間を選択した理由は?」

そんな時は、

「この期間に設定したのは、こうした時期にはこうしたパパの役割があって、パートナーをサポートするためにはこれだけの期間の取得が必要なのです。」

と淀みなく答えられるようにしましょう。そのための理論武装として上記の内容を参考にしてみてください。

3 育休期間に関するアンケート調査

以下ではアンケート結果から見えてきた育休期間について分かってきたことを記載します。

3.1 パートナーの希望する育休期間

まずは、パートナーであるママさんの意見を見ていきましょう。

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「具体的にどの程度の期間の育休を取得して欲しいか」という質問に対するパートナーの回答が上表です。「1ヶ月以上〜3ヶ月未満」が50.0%、「2週間以上〜1ヶ月未満」が26.1%となっており、産褥期(出産後に体が妊娠前の状態に戻るまでの期間。2ヶ月程度)や床上げ(出産後に母体を休めるために敷きっぱなしにした布団を片付ける時期。産後3週間程度)までは最低限パパにサポートして欲しいというのがパートナーの意見であることがわかります。家事や育児にしっかりと携わるのであれば、この期間の育休取得は必須だと言っていいでしょう。

加えて、「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」も約10%となっており、3番目に多い回答となっています。産褥期以降も言葉の通じない赤ちゃんと四六時中一緒にいるのは疲れるものですし、夫婦で育児の喜びを共有することは素敵なことですから、できることなら一緒に子育てをしていきたいという声がありました。1、2ヶ月もいいですが、思い切って半年間育休を取得するというのも今後の上司との折衝に向けて選択肢としては持っておきたいですね。

3.2 男性育休の取得期間

次に、実際に育休を取得した男性に対して現在実施している育Qアンケートの暫定結果をご紹介します。

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男性育休を取得した113名の回答者の育休期間を表した物が上表です。「1ヶ月以上~3ヶ月未満」か21.2%と最も多くなっていますが、「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」が14.2%、「6ヶ月以上~9ヶ月未満」が18.6%となっており、長期間にわたって育休を取得する割合が多いことがわかります。

(参考)
一般的には男性育休取得者の多くは5日未満の短期の育休を取得しているという厚生労働省の政府統計が知られていますが、今回のアンケートのように家事や育児に積極的な育休取得者の回答から見えてくる結果は政府統計とは少し異なるようです。

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こうした長期間の育休を取得した回答者に対して自身の育休期間について聞いてみたところ、「ちょうどよかった」が55.9%と回答し、「もっと長く取得すればよかった」が44.1%に上ります。もちろん、「もっと短くてよかった」はゼロです。家事や育児が尽きることはありませんから、男性育休取得者の多くがパートナーのサポートや子供の成長にもう少し携わっていたいと感じながら育休からして復帰している様子がわかります。

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では最後に男性育休経験者が“オススメする育休期間“をみていきましょう。「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」が25%と最も多くなっており、次いで「1ヶ月以上〜3ヶ月以上」となっています。一方で、1ヶ月未満の育休期間は合算しても10%にもなりません。パートナーの希望する育休期間からも見えてきたように、床上げ期や産褥期については最低限サポートをする必要がありますので、最低でも1ヶ月、3ヶ月はなんとか死守したいですね。

また、「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」が25%、「6ヶ月以上〜9ヶ月未満」が14.4%、「9ヶ月以上〜12ヶ月未満」が16.3%、「12ヶ月以上〜18ヶ月未満」が15.4%と長期間にわたる育休期間をオススメする声も多くあります。色々な事情で男性が育児を担うために長期間の育休が必要なケースもあるかもしれません。また、家族と一緒にいる時間を大切にしたい方や子供の成長を間近で見ていたい方とっては長期間の育休がオススメということですね。

4 ケーススタディ:シカゴリラの場合

私は育休取得期間として1年を選択しました。これは#2〜4に記載した「こんな私が育休を取得した理由」にも記載したとおりで、パートナーのサポートをする必要性に加えて、赤ちゃんの成長を見守りながら家族と一緒にいることができる人生の中で最高の時間を少しでも長く過ごしたかったからです。そこで、その旨をパートナーに相談してみました。

🦍「育休期間だけど一年間取れる制度になっているから、まずは一年間で申請を出してみようと思う。ただ、現実的には上司と業務について相談しながら調整して折り合いをつけることになるとは思うけど。」

👩「一年間も取得したら仕事復帰したくなくなっちゃうんじゃないの。それに、お金の面も心配だし。」

🦍「そうだね。仕事復帰したくなるなる可能性はあるよね。しかも、仕事からしばらく離れているから業務内容へのキャッチアップにも時間がかかるかもしれないし。ただ、ここは何が自己研鑽をつうじて育休をステップアップの機会にしようと思ってる。それに、お金については前回も行ったけど、育児休業給付金が貰えるからなんとかなると思うよ。

👩「本当にお金はなんとかなるの。育児休業給付金はいくら貰えるの?」

🦍「月30万円くらい。非課税だから手取りで30万円(本当は半年過ぎると25万円くらいだけど、これは黙っておこう)。なので、生活はできると思う。」

👩「それだと生活がギリギリかもしれないよ。」

🦍「そうだね。けど、育児休業給付金をもらって貯金するわけでもないし、生活費をもらっていると思えば、ギリギリでいいんじゃないかな。」

👩「それはそうだけど。子供が小さい頃は何が起こるか分からないから備えは必要じゃない。」

🦍「そうだよね。そこはきちんと考えているから。任せておいて。」

こうして、なんとか一年間育休取得の申請をすることについて押し切りました。けど、金銭面の負担については懸念を表明して頂いたので、この点については詳細に検討することとなりました。次回に向けた宿題です。

5 最後に

ここまで育休制度を確認した上で、育休期間ごとのパパの役割を概説し、最後に育休期間についてアンケート調査から分かった“オススメの育休期間“を紹介しました。

実際に育休期間を検討する上では個別の事情を考慮してする必要があります。例えば、職場の育休制度や仕事の状況、金銭面の負担、パートナーの意向、周囲のサポート等といった様々な要因です。ただ、パートナーをサポートしつつ、生まれたての赤ちゃんが新生児から幼児へ成長する過程を間近で見ることができる経験はとっても貴重です。育休取得者の多くは「もう少しパートナーをサポートしたかった」、「もう少し子供の成長を見ておきたかった」と後ろ髪を引かれながら職場に戻っています。

そのため、育休期間を決める上で検討しないといけない要素は数多あれど、一番大事なのは「自分がどうしたいか」ということに尽きると思います。まずは「自分は一年取得したい」、「自分は半年取得したい」、「3ヶ月取得したい」と、自分の心と相談して見てください。そうして、自分の思いが明確になった上で具体的な条件を詰めていけばいいと思います。まずは自分の気持ちを大切にしてしましょう。

長文を最後まで読んでいただきありがとうございました。
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(参考)育児休業期間の延長
育児休業は例外的な措置として、1歳になる時点で保育所などに入所できない 等、雇用の継続のために特に必要と認められる場合に限り、1歳6か 月まで(再延長で2歳まで)育児休業を延長することができます。地域によるかとは思いますが、都市部を中心に保育所の入所倍率は非常に高くなっており現実的には年度末以外は入所が厳しい事が多くなっています。そのため、保育所への入所申し込みを行なったが入所できない場合については育児休業を延長する事ができます。

男性育休取得に向けた5ステップ

①パートナー(ママ)への相談

②社内育休制度の確認

③育休期間の検討

④金銭面の検討

⑤社内承認

コメント

  1. […] 「何故育休を取得するのか?」「育休期間はどのように決めたのか?」「金銭面の負担は大丈夫なのか?」「奥さんはどう考えているのか?」「人事制度上、男性も育休を取得できるのか?」「業務引き継ぎはどうするのか?」「復帰後の希望はあるか?」「キャリアロスにはつながらないのか?」「時短勤務や在宅勤務ではダメなのか?」「人事部には話しているのか?」「思い直してくれないか?」 […]

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