男性育休取得率の現状〜育休希望者は“ぜんぜん“育休を取得できていない〜

男性育休の現在と未来

男性の育児参加の必要性が叫ばれる昨今、男性育休への関心は間違いなく高まってきています

実際に、2020年初頭に小泉進次郎環境大臣が育休の取得を発表した際には連日ワイドショーで育休が取り上げられ、取得の是非に賛否両論あるものの、少なくとも世間に男性も育休を取ることがあるのだという事実を認識させました

こうした世間の男性育休への関心が高まりを受け、2020年は「男性の育休元年」と呼称されることもあります。

しかしながら、現状では男性育休を希望する者(男性育休希望者)はぜんぜん育休を取得できていません

そこで、当記事では統計データを交えながら以下について説明していきます。

  • 男性育休取得率の現状と海外との比較
  • 男性育休希望者が育休を取得できていない現状
  • 男性育休取得が取得できない理由

男性育休を1年間取得したシカゴリラの経験も踏まえながら分かりやすく解説していきます。

是非お付き合いください。

男性育休取得率の現状〜低迷する男性育休取得率〜

男性育休取得率

厚生労働省の発表によれば、我が国の男性育休取得率は2018年度において6.16%と低迷しています。

直近の2019年度においても7.48 %(+1.32pt)と微増に留まっています。

そのため、政府が掲げる「2020年に男性育休取得率13%」の達成は難しい見込みとなっています。

海外の男性育休取得率との比較

では、国際的に比較した場合に日本の男性育休取得率はどのように見えてくるのでしょうか。

独立行政法人労働政策研究・研修機構「国際比較から見る日本の育児休業制度の特徴と課題」を基に作成された上図によれば、日本の男性育休取得率は欧米諸国に比べても著しく低いことがわかります。

我が国の男性育休制度〜世界的に最も優れた育休制度〜

しかしながら我が国の男性育休に関する制度は国際的に見て非常に優れています

例えば、2019年にユニセフの調査が経済協力開発機構(OECD)と 欧州連合(EU)のいずれかに加盟する国41カ国について行った調査によれば日本は父親の取得可能な有給育児休暇期間は世界1位です。

加えて、同調査においては総合評価においても1位を獲得しています(取得可能な産休・育児休業期間に、賃金と比べた給付金額の割合を加味し、賃金全額が支給される日数に換算した結果を比較したランキング)。

※育児休業制度(育児休業期間、育児休業給付金、社会保険料免除等)については以下の記事で詳細に記載しています。

このように、日本の男性育休に関する制度は国際的に優れているのに対して、実際の取得率が伸び悩んでいることが分かります。

男性育休希望者は“ぜんぜん“育休を取れていない

男性育休希望者(政府調査)

では、世の中の育児に携わる男性の育児休業を取得したいというニーズはどの程度あるのでしょうか。

この点については、内閣府が実施したアンケート調査(2017年)に結果があります。

この結果によると、男性の育児休業希望者は43.5%に上り、半分近い人が育児休業の取得を望んでいることが分かります。

実際の取得者は8.2%となっており、取得を希望するも取得が叶わなかった者が実に35.3%に上ることが分かります。

育児休暇を取得したい人は8割!?(民間調査)

2014年にユーキャンが実施した全国のビジネスマン497名に対するアンケート調査においては実に83.9%が育休を取得したいと回答しています。

統計によって母集団の違いや育休の定義が異なるので結果が変わってきますが、少なくとも男性育休の希望者が相当数いることが分かります。

男性育休取得期間〜取得期間は5日未満が過半数〜

男性育休希望者が育休を取得できていないことは分かりましたが、実際に育休を取得した人は十分な期間に渡って育休を取得できているのでしょうか。

厚生労働省が実施した調査によれば、育児休業を取得した期間についても56.9%が5日未満であり、1ヶ月未満が8割に上ることが分かります。

こうした結果から、男性の育児休業を希望する者の多くが育児休業を取得できておらず、また、その期間も十分とは言い難いことが分かります

男性育休を取得できない理由〜男性育休を取得しづらい雰囲気〜

では、男性の育児休業の取得を希望する者が取得できない背景にはどのような要因があるのでしょうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2017年度に実施した調査から「男性育休を利用しなかった理由」が分かります。

その理由としては、「業務が多忙で職場の人手が不足していた」が最も多く27.8%、次いで「会社で育児休業制度が整備されていなかった」が27.5%、また「育児休業を取得しづらい雰囲気だった」が25.4%と高い割合を締めています

こうした要因が一つ、もしくは複合的に絡み合い、育児時休業を希望する者が一歩を踏み出すことに躊躇っていることが分かります。

ただ、「業務が多忙で職場の人手が不足していた」というのは、まさに「育児休業を取得しづらい雰囲気だった」の理由とも言える項目ですから、男性育休を取得できない最大の要因は人手不足を含めた「男性育休が取得しづらい職場の雰囲気」にあることが分かります

※男性育休が取得しづらい職場の雰囲気について欧米諸国との違いを踏まえて記事を記載しています。職場の雰囲気について詳しく知りたい方はご一読ください。

最後に〜男性育休を引き上げるためには〜

本記事では最初に男性育休取得率が低迷している現状を統計的に解説しました。

その上で、日本の育休制度は世界的的に見て最も優れており、かつ、男性育休希望者は世の中の父親の過半数に及ぶことが分かりました。

しかしながら、男性育休取得者は低迷しています。その最大の理由となっているのが「男性育休が取得しづらい雰囲気」ということを説明しました。

では、男性育休取得率を引き上げるためにはどうすれば良いでしょうか

次回の記事では政府の男性育休取得率の達成目標その実現に向けた3つの目玉政策について解説します。

コメント

  1. […] […]

  2. […] 育児休業中は育児休業給付金が受領でき、かつ、社会保険料等の控除を受けられるため、実質的に手取りでは育休取得前の給与の約8割を受領できると言われています。手取りで8割という水準は国際的に比較した場合も非常に高水準であり、国際機関の調査においても日本の男性に対する育児休業制度は世界でも最も充実している言われています。ただし、現実問題として、金銭的な余裕がわずかな中で2割が削られるというのは大きな負担になる場合もあり、育児休業の取得を断念する理由になり得ます。 […]

  3. […] こうした男性育休義務化の背景にある「個人に対する働きの諦め」の要因とはなんでしょうか。それは、男性育休の普及を阻む最大の要因は男性育休取得をおくびにも言い出しづらい職場の雰囲気にあります。その雰囲気を乗り越えて社内承認を勝ち取ることは非常にエネルギーの必要なことです。このプロセスを経る位であれば男性育休は取得しないほうがましと諦めてしまっている方がほとんどです。 […]

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