#5【人生100年時代】人生の1%は家族のために

育休取得3つの理由

私が育休を取得した理由は以下の3つです。

  • 第一子出生時の反省
  • 過去の職場における男性育休取得者
  • 人生の1%は家族のために

今回は最後の「人生の1%は家族のために」を記載します。

人生の1%というのは、人生が100年だとしたらそのうち1%にあたる1年を家族のために使ってもいいのではないかということです。私の想いが溢れたばかりに6,000字近くになってしまいましたが、よかったらお付き合いください。

まずは人生100年時代について記載します。

我が国における人生100年時代

人生100年時代という言葉は、ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・クラットン教授らが執筆した「LIFE  SHIFT 100年時代の人生戦略」という本の中で提唱した言葉です。世界で長寿化が急激に進み、先進国では2007年生まれの2人に1人が103歳まで生きる「人生100年時代」が到来することを予想し、既存の人生設計や社会構造の見直しの必要性を説いています。日本でも2017年9月に首相官邸に安倍首相を議長とする「人生100年時代構想会議」が発足し、以下の4つを主なテーマに、超長寿社会における経済・社会システムに関する議論が進められました。

①全ての人に開かれた教育機会の確保、負担軽減、無償化、そして、何歳になっても学び直しができるリカレント教育
②これらの課題に対応した高等教育改革
③新卒一括採用だけでない企業の人材採用の多元化、そして多様な形の高齢者雇用
④これまでの若年者・学生、成人・勤労者、退職した高齢者という3つのステージを前提に、高齢者向け給付が中心となっている社会保障制度を全世代型社会保障へ改革していく

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/

こうした論議に基づき2018年6月には、幼児教育の無償化の加速、待機児童問題の解消、介護職員の処遇改善、学び直しの支援、介護職員の処遇改善、学び直しの支援、高齢者雇用の促進等からなる「人づくり改革 基本構想」が発表されるなど人生100年時代という言葉が内在する問題提起をきっかけに我が国においても経済・社会システムを含む政策方針への反映が進められています。

人生100年時代の男性育休の必要性〜トップダウン〜

人生100年時代に向けた国の論議が進む中で、そのうねりは広い分野に波及し、男性の育児参加の気運の高まりに繋がりました。

社会的に責任のある立場である男性の国会議員が2016年に育休取得希望を表明、そして小泉進次郎大臣が2019年に長男出生のタイミングで育休取得をすると発表しました。前者は志半ばで頓挫してしまいましたが、小泉大臣は実際に大臣という要職にあり、コロナウイルスという未曾有の疫災に見舞われながらも公務を優先しながら12日間相当の育休を取得しました。

そんな折に我が家には2015年に第一子、2019年には第二子が誕生しました。こうした国のトップが育休を取得するというトップダウンともいうべき社会動勢は、ボトムにいる私の育休取得を後押しするものと心強く感じていました。

人生の1%くらい家族のために

そんな社会動勢の後押しを受け、私は第二子出生児に育休を取得することにしました。

取得期間については思い切って1年間としました。1年間という長期育休を取得した理由は3つあります。

理由①育休とは、休みではなく出向である〜育児出向〜

本連載において育休とは育児休暇や育児休業の略称として使用しています。

育児休暇と育児休業は育児に伴い会社を休むという目的は同じですが、制度上は似て非なるものです。

育児休業と育児休暇の違い

育児休業とは、「育児・介護休業法」に基づき子育てのために取得する休業です。原則として1歳未満の子供を養育する労働者に認められた権利です(企業は拒否できません)。育児休業中は雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
育児休暇とは、企業が独自に設定・運用する育児をするための休暇です。子供の出生に伴い有給を利用して短期間休暇を取得する場合等が含まれます。

両者ともに休暇や休業という言葉が入っていますが、“育休は、決して休みではありません“。職場の仕事を休んで、家庭で育児や家事等を担うということです。

新生児の生活リズムは不定で、24時間体制でケアをする必要があり、自身の食事やトイレの時間もままならないことがあります。そのため、育休という言葉は誤解を招きかねない言葉だと違和感を感じます。むしろ、育児出向だと私は思っております。

そこで、架空の人事出向制度を念頭に、以下に“育児出向とは何か“、“育児出向の意義“、そして、“育児出向に伴う処遇”について記載します。

■育児出向とは何か

育児出向は、「育児を目的とし、一定期間職場を離れて家庭に入りパートナー(ママ)と共同して育児に励むための出向」です。

■育児出向の意義

育児育児出向では、パートナーや親族、自治体、地域住民と協働して新生児を立派に育て上げることを目的としたプロジェクトを遂行します。プロジェクトリーダーはパパとママです。当該プロジェクトにおいては、従前の職場とは異なる新しい環境で未経験の業務に携わります。
新生児を育て上げるため、失敗すると命に関わる任務でプロジェクトリーダーは重責を担います(ストレス耐性)。勤務時間はパートナーと連携しながら24時間体制です(危機管理能力)。必要に応じて周囲を巻き込無ことが重要ですが、その場合はファシリテーション能力が求められます(ファシリテーション能力)。また、多くの管理能力が必要で、毎日の新生児の睡眠、食事や排泄はもちろん、身の回りの美品の買い出し等の生活管理(業務管理能力)、減少する収入での収支管理(収支管理能力)、加えて、親戚周りやお宮参り、お食い初めといったイベントに向けた目標管理も求められます(目標管理能力)。
このように、新生児の育児というプロジェクトを完遂し、様々な能力を身につける事でビジネススキルを向上させるのが育児出向です。

■育児出向に伴う処遇

育児出向中は、育児休業給付金で減額される金額は必要経費を控除した額が会社から夜勤手当や残業代を加算した上で補填されます。また、出向中の昇給や昇進についても職場に勤務した場合と同等の扱いとなります。加えて、プロジェクトにおいてパートナー等から高い評価を得られた場合には考課が上がりボーナスに反映され、出向後も一定の希望を与した職場への復帰が約束されます。

育児出向なる人事制度を考えたきっかけ〜社長の一言〜

こうした育児出向なる制度は架空の人事制度ですが、このような理念のもとに育休促進を図る企業というのは今後少しずつ出てくるのではないかと思います(既にあるのかも知れません)。

こうした育休を“育児出向“なる人事制度にしてはどうかという考えに至ったきっかけは私自身の出向経験に基づきます。10年近く前に私が外部出向している時に出向元の社長とお酒の席をご一緒する貴重な機会に端を発します。

「これからの時代は会社を外からの視点で客観的に見る能力が求められる。会社の役員も出向経験者のように外からの視点を持つ人材にしていかないとな。」

と、社長はおっしゃっていました。

出向による外部目線の獲得〜バランス感覚とガバナンス〜

昨今の法令遵守の重要性の高まりやグローバル化、ダイバーシティ推進等に伴い、企業経営の攻守において、外部目線ともいうべき経営のバランス感覚やガバナンス意識は重要になっていると感じています。コーポレートガバナンスコードの適用等によって日本企業における社外取締役の導入が進んでいますが、これはまさに企業経営における外部の目線の必要性を示すものであり、こうした外部の目線は社外取締役以外の社内取締役においても当然に持つできものではないでしょか

外部目線を身につけるためには年単位の育児出向

こうした、外部の目線を持つ上で職場とは全く異なる環境で新生児を育てるというプロジェクトを遂行することを目的とした社外出向は最適の機会に違いありません。そして、そのためには数日や数週間ではなく、年単位の期間が必要になってきます。

理由②第一子出生時の反省〜パートナーシップの変化へ対応出来なかった自分〜

子供の誕生は不思議なもので、子供が生まれると家族というものを強く意識するようになりました。

子供がいないときのパートナーシップ〜独立性〜

パートナーと2人暮らしの時はお互いに自立した存在であるため、家事を分担することはありましたが、基本的には独立した存在でした。妻はピアノの講師をしながら家事全般をこなし、私は会社で働きながら週末の家事を手伝うといった生活でした。2人は妻と夫というお互いに依存しない独立性の強いパートナー関係でした。

子供が生まれてからのパートナーシップ〜協働性〜

しかし、子供が生まれると2人の関係は大きく変わりました。夫婦というパートナー関係に加えて、両親として子供を育てるパートナー関係が加わってきました。そうなると、独立性の強いパートナー関係は急激に変化し、子供を共に育てる協働性の強いパートナー関係に変わってきました。

第一子出生児の反省

しかし、第一子出生児の私はどうでしょうか。仕事が忙しくて週末以外は育児をできるような状況ではありませんでした。加えて、子供が3ヶ月になる頃から毎月のように長期出張が入るようになり、1週間家を開けることもしばしばでした。こうした状況では到底パパとして十分育児に参加することはできません。パートナー関係が変化し協働性が求められる中で、その一方がその役割を発揮できなかった場合、他方にしわ寄せがいきます。その結果が、#2で書いたエピソードにつながりました。

私は第一子の出生時にはパートナーとしての役割を怠っていたと反省しています。

もちろん、仕事が忙しく育児に参加することはできませんでしたし、当時は男は子供が出来たら外で頑張って働くものという前時代的な認識を持っていたかもしれません。そのため、第二子出生時には第一子出生時の反省も踏まえて育児・介護休業法で認められている最長期間の“一年“を視野に入れて育休を取得したいと考えていました。

理由③育児ができることは当たり前のことではない

最後に、私には「育児をすることができるのは当たり前のことではない」という強い思いがありました。世の中には育児がしたくても叶わない人がたくさんいます。子供が欲しくてもできない方、子供ができても病気で子供と離れて暮らさざるおえない方、子供を残して亡くなる方。

母の思い出

実は、私の母は私が幼稚園の年中の時に命を落としました。

私はまだ小さかったのでほとんど母親の記憶はありません。覚えているここと言えば、ご飯を食べるのが遅いと家の外に出されること、魚屋さんで生の鮭をつまみ食いして怒られたこと、それに、車の運転をしている母が後部座席の私を振り返った時に目が黄色かったことです。

母の目が黄色くなってすぐに母は入院しました。入院する病院に行くといつも厳しかった母がとても優しくしてくれて、緑色の巾着から百円玉を出してジュースを買うお金をくれました。そんな優しい母も入院してすぐに容体が悪化し亡くなりました。

母の無念

親の心子知らずと言いますが、親になって初めて分かることがあります。それは、母が子供の成長を側で見ながら生きていきたかっただろうという無念です。そのため、私は、子供の傍らで子育てができることは当たり前のことではないと感じています。神様が与えてくださった人生の中で最も特別な事の一つです。だから、自分にも子供ができ少しでも長く子供の成長を側で感じていたいと強く思うようになりました。

奇しくも長女はもうすぐ5歳で、私が母を亡くした年齢と同じになろうとしています。こうした時期に2人の大切な子供の成長を傍らで見守りたいという想いを可能にしてくれるのが長期育休でした。

このように、私は育児ができる事は当たり前のことではなく‘特別な事‘だという想いから、1年間という長期の育休を取得することを決意しました。

最後に〜人生100年時代、人生の1%は家族のために〜

人生100年時代という言葉が社会に与えた影響は大きく、そのうねりは、国の最高機関のメンバーである国会議員を動かし、私を含むボトムの一般市民にまで波及しています。

長期育休を取得した3つの理由

こうした時勢を背景に、一年間という長期育休を取得しましたが、その理由として3点挙げさせて頂きました。

一点目は、育児出向という架空の制度に基づく人財育成の観点

二点目は第一子出生時の反省

最後に「育児ができることは当たり前のことではない」という強い想いです。

こうした理由を踏まえて、1年間の育休取得を決意しました。

働き方改革は生き方改革

人生100年時代に向けて、政府や企業等は新しい働き方の在り方を現在も継続して検討しています。それに呼応して我々個人においても働き方について考える必要性があります。

そんな時に、働き方だけではなく家族や子供との在り方といった”新しい生き方”のようなものも併せて考える必要があるように思います。育休というのもそんな”新しい生き方”の選択肢の一つとして選べるようになってきました

新しい時代のうねり

ただ、まだ長期の育休を取得するという選択をする男性は多くありません。

けど、人生100時代です、子供が生まれる人生の中でも特別なタイミングで1年間職場を離れて家族や子供と向き合う時間を作ってもいいのではないでしょうか。

慣習に拘泥する必要はありません、新しい時代のうねりに身を任せてはどうでしょうか!

人生の1%は家族のため!

長文を最後まで読んでいただきありがとうございました。

コメント

  1. […] そんな超長期の人生の中で、シカゴリラさんの「人生の1%を家族のために」という考えは、 […]

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