1.育休を取得した3つの理由
私が育休を取得した理由は以下の3つです。
①第一子出生時の反省
②過去の職場における男性育休取得者
③人生の1%は家族のために
前回①について触れましたので(私の懺悔録みたいになってしまいましたが)、今回は2つ目の理由「過去の職場における男性育休取得者の存在」について綴っていきます。
日本人は慣例好きな民族といいますか、前例がないことには臆病になり一歩を踏み出さない傾向があるかと思います。よく言えば伝統を重んじるとも言えますが、新しい価値を取り入れずに伝統に拘泥するとも言えます。
私も一般的な日本人の例に漏れず、やはり周囲に前例がないと一歩を踏み出せない臆病なところがあります。なので、私が育休取得ができたのは幸運にも過去の職場の周囲に育休を取得した人がいたからでした。
具体的にはニ名います。一人は私が米国に留学していた際の研究室の同僚で、もう一人は日本の職場の直属の上司です。では、一人ずつ紹介していきたいと思います。
2.ケビンと3人の天使たち(米国留学時の同僚のケース)
私は元々研究者になろうかと思っていましたので、大学卒業後に米国の大学院に進学しました(米国大学院に進学した理由を書き始めると長文になってしまうので、ニーズがあればいつか書きたいと思います)。
大学院では学科の授業もあるのですが、基本的には研究室に通いながら自分の研究テーマを定め研究を深めていきます。そのため、学校に通学するというよりも、研究室に通勤して時々授業に出席するうという生活スタイルでした。
大学院に入学してすぐに研究室に着任しました。着任日に私は教授への挨拶の後、研究室のメンバーを紹介してもらうと、机を渡されました。広い研究室で机こそ貰ったものの何をして良いのか分からず、取り敢えずパソコンを広げてたまったメールをチェックしていました。そんな時に、一人のヒゲを蓄えた30代後半の白人の男性ケビンが話しかけてくれました。まだ慣れない国、慣れない言葉、慣れない研究室で不安を感じていた私は彼の行為をとてもありがたく感じ、たどたどしい英語で彼に自己紹介をしました。そして、翌日から毎日顔を合わせるようになり段々とケビンと仲良くなりました。
ある日、ケビンと話していると、彼は既に二人の子供がいて、現在妻が妊娠していて出産が近いと言いました。そして、子供の出生に伴い暫く研究室を休むことを教えてくれました。
私はまだ20代半ばで子供がいないのは勿論のこと、結婚すらしていなかったので、無邪気にこう質問してしまいました。
「奥さんが子供を産むのに、何で君が休む必要があるんだい❓」
すると、彼は少し語気を強めて言いました。
「パートナーが大変なときにサポートしてあげるのは当然の役割だろ。」
当時はその言葉の意味をきちんと理解できるほどパートナーというものや出産というものを理解できてはいませんでしたが、信頼する仲間の強い言葉に、不思議と私の心にその一言が残りました。
そうこうしているうちに、彼は出産の準備をするため予定日の一週間前から育休に入りました。
1ヶ月程すると彼は研究室にお人形のような目がまん丸で髪の毛がくるくるした金髪の可愛い男の子を連れてやってきました。
「とっても可愛い赤ちゃんだね。名前はなんていうの❓」
「ラファエルだよ。我家の子供達はキリスト教の天使と同じ名前なんだ。」
実は、彼の3人の子供達はキリスト教の3大天使”ミカエル(michael)”、”ガブリエル(Gabriel)”、”ラファエル(Raphael)”からとっていたのです。3大天使のためなら、研究を一時中断してでも育休も取るべきだなと、妙に得心したことを記憶しています。
「育休中は何してたの❓」
「上の子供の世話や家事全般、それにパートナーのケアもしないとね。大忙しだよ。」
「それは忙しそうだね。奥さんの具合はどう❓」
「まだ万全には程遠いいけど、少しずつ回復してきているよ。今自分が家事や育児を分担することでパートナーの回復が早くなって、結果として家族の長期的なパフォーマンスは高まるんだよ。」
「そうなんだね。日本では男性が育休を取るということは一般的ではなくて、君が育休を取ると聞いた時には少し驚いてしまったけど、確かに君が育休を取ることで奥さんの回復も早くなるし、子供達もお父さんが近くにいてくれて嬉しいだろうし、家族の長期的なパフォーマンスは間違いなく上がりそうだね。」
「君も少しは男性が育休を取得する意味が分かって来たみたいだね。君もいつか結婚して子供が出来たら育休の取得を選択肢に入れてみるといいよ。仕事も大事だけど、家族も大事なんだから、家族が必要とする時に父親がその役割を果たすのは当然のことだろ。」
「そうだね。当然のことだね。」
「それに、婚姻を結んだ時に病める時も健やかなる時も、パートナーを支えると神に誓うんだよ。パートナーを支えることが自分の役割なんだよ。君もいつか結婚して子供ができたら、しっかりとパートナーを支えてあげるんだよ。」
「分かったよ。そんな日が来たらね。」
当時は話半分で彼のアドバイスを聞いていて、正直自分が育休を取ることになる日が来るのかは半信半疑でした。というのも、彼の話から男性育休の必要性は理解できたのですが、そもそも日本では男性育休を取る人の話を当時は聞いたこともありませんでした。
けど、欧米の習慣は多くの場合に日本に輸入されて浸透することが多いですし、また当時から女性の社会進出が求められていたので、時代の流れとしては男性の育休が日本でも推奨される日がいつか来るのかもしれないとも感じていました。
いつの日か自分が結婚して子供ができて、パートナーや家族の為に育休を取ることが必要な状況になり、かつ、社会がそれを許容してくれるのならば、育休を取るという選択をしたいと、漠然とではありますが、しかしながら強く意識したのを覚えています。
3.最後に
以上が、私の周囲にいた育休を取得した一人目の男性ケビンに関するエピソードです。
ケビンの育休に関するエピソードは、男性育休の必要性を教えてくれるとともに、海外には育休というものを取る男性がいること、そして何より“パートナーや家族のサポート”の大切さを教えてくれました。
もしかすると、海の向こう側の話ですので、ここまで読んで頂いた方の中には、あまり現実味がないと思われる方がいらっしゃるかもしれません。ただ、実はもう一人、私の周囲で育休を取得した男性がいました。次回はその方のエピソードを綴ろうと思います。
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